2005.11.26
日本音楽集団 第181回定期演奏会
~合唱と邦楽器たちとの出会い
報告:佐々木久枝/会社員/階C1-7席
投稿日:2005.11.26
金曜日は久しぶりに行き付け(?)のホールへ。運河の向こうにはクリスマスのイルミネーション。運河沿いにも白と青のイルミネーションが施され、すっかりクリスマス模様。早いなぁ・・・・
さて、今回の演奏会は日本音楽集団の定期演奏会。通常「集団」の皆さんもお元気そうだ。今回もなかなか意欲的な内容。
クリスマスツリーの飾られたホールロビーでは若手団員達5名による「五声のコンチェルティーノ」。特に打楽器の躍動的な動きが印象的。腕の立つ団員が参加しているのだから技術面は何ら問題ないのだが、何よりも積極的に一音一音出しているのが好印象。
さてまずは「梁塵今様」。後白河上皇の手になる歌の幾つから構成される児童合唱曲。「春の初めの」での2部構成ではまず異なるリズムを歌い分ける児童合唱団に驚き。「鈴はさや振る」では琴のたゆたうような横の流れにのって鈴を踊らせるような動きある歌。「月かげゆかしくは」では笛の切なさと合唱の上昇形とが重なり合い、月空から松山への空間の緩やかながらもダイナミックな動きが描き出されていた印象。「山伏の腰につけたる」では前半の山伏の~でみられる猛々しい鋭さと、砕けて~の夢見心地な部分との対象が鮮やか。現代曲もこなす彼らなのだが、古の言葉との溶け合いもまた不思議。「遊びをせんとや生まれけむ」では歯切れ良い打楽器クレッシェンドにあおられるような合唱そして合奏。音遊びを楽しんでいるように見受けられて、上々の滑り出しだった。
続く「秋の一日」ではほのぼのとした雰囲気。現代のコンクリートジャングル社会に辟易する中で、これからも大事に持っていたいものを思い起こさせてくれた。序曲での「カンカンコロロン」のリズムもまた楽し。お伽歌劇「茶目子の一日」ではないが、描かれているのはごく普通の朝の光景。でもこのささやかな光景が何気に嬉しいのだ。「どんぐりこままわそう」ではあちらこちらを駆け回る元気な子供達の様子が描かれている。後半のこま回しの部分ではクルッとこまを回すスピーディな様子が描かれていた。第3曲「いわし雲みつけた」では尺八のゆったりした節回しにのってうつらうつらしている様子。「祭囃子がよんでいる」からは一変して調子の良いお囃子に大はしゃぎする子供達の姿が目の前に浮かぶよう。ナレーションはいずれも合唱団のメンバーが担当していたが、どの子供達も発音がきれいで表情も豊か。基礎が出来ているから歌っても語っても聴き応えあり。居合わせた知人とも「さすがプロフェッショナルですねー」と感嘆の一言。
「ひかりのうたげ」では時を越えて語り継がれていく蛍と魂との深い関わりが、わらべうたを用い、澄み切った児童合唱で歌われていく。飾らないからこそ随分ストレートに伝わっていくものだ。長崎と広島のわらべ歌がまずは単独で、続いて交わるように言葉が重ねられていく。合奏も歌に引き込まれるような演奏で、中でも三味線のグリッサンドがまずは弱音、続いて強音で深く入り込んでいく。
後半では「四季」ダンス・コンセルタントIから。今回唯一合奏単独のステージだが、のびのびと踊るような「踊る春」、続く「水巡る」では琵琶のそそられるような響きや4人の尺八による幅広い音色、琴の緩やかな分散和音が叙情的な雰囲気をかもし出していた。「秋、そして」では尺八ののどやかさがまた魅力的、「風の花」では一瞬モーツァルトのレクイエムのアニュスデイを思わせる静々とした響きが印象に残った。
いよいよ新実御大の「舞歌II」。音による自在な踊りを思わせる演奏。歌詞に顔文字まで出ていたのは驚いたが、確かに見比べながら聴いていると音楽の記号のようになかなか効果があるものだなと感心。
初めは琴は打楽器の響きを意識してか響きを抑えて弾いていたが、2度目は存分に響かせていた。途中で出てくる不思議なヴォーカライズや神々の名。ここで一瞬私は好きな合唱曲「祈祷天頌」を思い浮かべる。言葉や音で踊りの空間を作っていくのだが、相通ずるものといえば、時空を超えての言霊の自由な踊りではなかろうか。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
日本音楽集団 第181回定期演奏会
~合唱と邦楽器たちとの出会い
日時: 2005年11月18日(金)19:00開演
(18:35より新入団員によるロビーコンサートあり)
出演者:田村拓男(指揮)、日本音楽集団、NHK東京児童合唱団
演奏曲:
川崎絵都夫:梁塵今様~児童合唱と邦楽合奏のための(2005年)委嘱初演
長沢勝俊:秋の一日(1985年)
信長貴富:ひかりのうたげ~童声合唱と邦楽器のための(2005年)委嘱初演
三木稔:「四季」ダンス・コンセルタントⅠ(1973年)
新実徳英:舞歌Ⅱ~児童合唱と邦楽アンサンブルのために(2005年)委嘱初演