2022年に始まった、ウェールズ弦楽四重奏団(ヴァイオリン:﨑谷直人、三原久遠、ヴィオラ:横溝耕一、チェロ:富岡廉太郎)による、ウェールズ・アカデミー。その第3期生とウェールズ弦楽四重奏団によるガラ・コンサートが3月9日に開催されます。受講生である、クァルテット・リコルドとクァルテット・アチェロのメンバーに、アカデミーでのレッスンや3月のコンサートなどについて聞きました。
[聞き手/文:山田治生(音楽評論家)]
クァルテット・リコルド
クァルテット・リコルド(ヴァイオリン:米岡結姫、松本陽輝、ヴィオラ:井上麗香、チェロ:金叙賢)は、桐朋学園大学、同大学大学院の在学生、卒業生によって、2023年に結成されました。
アカデミーのレッスンについてはいかがですか?
米岡:すごく手厚く、学校ではできないほど、細かく教えていただいています。自分たちの課題が見つけられるようになりました。
松本:現役のプロの弦楽四重奏団の方に見てもらえるということは貴重だと思います。僕は弦楽四重奏の経験が豊富ではないので、音の出し方や溶け込む音がわかっていないところがありますが、経験豊富な先生方が実際に弾いてくださって、弦楽四重奏での弾き方がわかるようになりました。先生方は例え話がわかりやすい。弾いていて、常に楽しく学べます。
井上:学校は試験に向けて曲を作っていくので、正確さが求められます。アカデミーでは、演奏会に向けて曲を作っていって、音楽の面白さを教えてもらっています。
金:合わせとかでの自分たちの悩みに対して親身になって教えてくださる。私たちだけでは考えられなかったアイデアをいただいて、幅が広がります。
米岡:私は第1ヴァイオリンなので﨑谷さんに教わることが大きい。﨑谷さんの澄んだ音が美し過ぎて、自分もそういう音を出したいとアカデミーを受けながらずっと思っています。
井上:三原さんの言葉がすとんと入ってくるのですが、三原さんの言語力は凄いですね。横溝さんは、ヴィオラとヴァイオリンの二刀流で、私はどうするか悩んでヴィオラにしたのですが、憧れですね。富岡さんは間近でチェロを弾いてくださったときの音の深さが印象に残っています。
3月の演奏会に向けての抱負をお願いします。
米岡:私たちメンバーは想像力が豊かで、よく曲をどう感じるかの話をしますが、自分たちが考える風景とか色とかをお客さまに伝える演奏ができればいいなと思います。
松本:3月の演奏会では、楽しく、音でいろいろ表現できるようにがんばります。
井上:クァルテットの基盤を作っているところですが、今は、以前よりも自由度も増して、3月の演奏会では本番でしかできないことができればと思います。
金:3月までアカデミーで学べることは全部学びます。パッションを高めつつ、バランスのとれた演奏をしたいです。
クァルテット・アチェロ
クァルテット・アチェロ(ヴァイオリン:平井美羽、清水伶香、ヴィオラ:菊田萌子、チェロ:松蔭ひかり)は、2024年4月に開催された秋吉台音楽コンクールに参加するために結成され、第3位入賞を果たしました。現在、4人とも、東京藝術大学大学院に在学中です。
アカデミーでのレッスンについての感想を教えてください。
菊田:理解するまで丁寧に教えてくださり、一緒に考えてくださる。緻密で細かいレッスンです。
清水:レッスンでは新しいアイデアがもらえます。イメージや雰囲気ではなく、結局、どうしたらアンサンブルとしてよくなれるか、というところを知ることができます。なんとなく感じていることを、しっかりと表に出すことが大事だと学びました。
平井:自分では思いつかないアイデアをいただいています。合わせをしていてなぜうまくいかないのか、レッスンを受けて、突き詰めて考えて、発見があります。発見の繰り返しです。クァルテットの基礎や大切なことを言葉として教えてくださいます。
松蔭:うまくいかないとき、テクニックから教えてくださいます。問題解決の糸口を教えていただいて、視野が広がるレッスンです。先生方の方がアンテナのセンサーが何倍も多い。そういう視点もあるのか、何で気づかなかったの、と反省します(笑)
菊田:クァルテットに向き合う上で大事なこと、基礎的なことを教えていただいています。教えてもらったことを全部そのままやるのではなくて、自分たちのなかに蓄積し、一から積み上げていくと、新しい曲をやるときもこういう風に作っていけばいいんだなと思えるようになりました。今後、自分たちだけでやっていくためのレッスンをしていただいています。その部分を教えてもらえるのを、すごくうれしく思っています。
3月の演奏会に向けて、ひとことお願いします。
平井:4月以降はそれぞれの留学や仕事で、しばらく会えなくなりますが、3月の演奏会でのシューマンの弦楽四重奏曲第3番をとても楽しみにしています。その後もまた集まってクァルテットができればすごくうれしいです。
インタビュー当日、レッスンをした講師の﨑谷直人さんはこう付け加えました。
﨑谷:今後、いろいろな素晴らしい先生から、いろんなこと言われても、自分たちで考えるベースがないと、洋服を着させられて、おめかしの仕方だけを覚えて、中身をともなわないで外に出ていくようなことになってしまいます。自分たちだったらこうするよねとか、このひきだしが使えるよねとかが増えていくと、全然違うアプローチのレッスンを受けても吸収できると思います。