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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

左より、小山弦太郎、鵜木絵里、中川賢一

中川賢一(ピアノ) 小山弦太郎(クワチュール・べー/サクソフォン)  鵜木絵里(ソプラノ・朗読)

子どもといっしょにクラシック
音楽と絵本コンサート『おまえ うまそうだな』

 大好評だった、恐竜の再来! 人気シリーズ「音楽と絵本」コンサートは、スクリーンに投影した絵本を、朗読に生演奏がついて見すすめるという、毎回とても盛り上がるステージです。2025年3月15日(土)の公演は、2019年の初演から大反響を呼んだ、宮西達也(作・絵)『おまえ うまそうだな』(ポプラ社刊)待望の再演をお届けします。

[聞き手・文:山野雄大(音楽ライター)]

20250315Umasou_interview.jpg大きな恐竜、ティラノサウルスが、生まれたばかりのアンキロサウルスの赤ちゃんを見つけ、食べようとするのですが‥‥なつかれてしまってさぁ大変。食べるわけにもいかず、えさをあげたり強敵から守ってあげたりと、すっかり情が移ってしまいます。そんなティラノサウルスと、彼をお父さんと慕う赤ちゃんの日々には、私たちの心を深く打つ展開が待っているのです。


◆恐竜の親子も、鵜木さんの自由自在な声色で!

 「絵本に音楽をつける舞台を幾つも作らせていただいてきた中でも、これがダントツの自信作です!」と語るのは、中川賢一さん(ピアノ/音楽構成)。原作の絵本がまず〈とてもコミカルで面白いのに、心の柔らかいところを深く突いてくる〉傑作なのですが、そこに中川さんが苦心の末につけた音楽も、初演から大好評でした。

 クラシックの名曲に時代を超えるポップスにと、バラエティに富んだ選曲――ちょっとだけネタバレしますと、宇宙や銀河にまつわる壮大なスケールの有名曲たちから、ミュージカル映画にシャンソンに‥‥。愉しい音楽が絵本としっくりはまるのは、演奏家たちの見事な呼吸もあってのことです。

 朗読をつとめるのは人気のソプラノ歌手、鵜木絵里さん。
 中川「鵜木さんが声色を変えて、恐竜の子どもと、親じゃないのに父親になってしまう恐竜、という2役を演じ分ける。これが最初のリハーサルから歓声があがるくらい凄かった!」という、その〈言葉のちから〉にもひたっていただきたいと思います。

 鵜木「まず私の母が、絵本を声色を変えながら読みきかせるのが得意で(笑)。聞いて育った私も、小学校の頃からみなの前で絵本を読んだりするのが得意だったので‥‥。私たちオペラ歌手はお芝居の研修も受けますし、声色を真似るのは昔から好きなんです」と仰るその演技は、初演から温かい笑いと深い感動の涙を呼びました。
 中川「クライマックスでとても高い音で歌ったり、その美しい高音から急に恐竜の低い声を出したり(笑)、大変な切り替えをお願いしているんですが、鵜木さんはすべてばっちり演っていただいて!」


20250315Umasou_(C)OkuboMichiharu_a_OK32443.JPG◆柔らかくて華やかで――サクソフォン四重奏&ピアノと声のブレンド

 多彩で素敵な声と共演するのは、中川さんのピアノに、クワチュール・ベー(サクソフォン四重奏)のみなさん。
 低音のバリトン・サクソフォンを担当する小山弦太郎さんも「この演目、大好きなんです。恐竜のお父さんの話だから、僕も父親としてぐっと来ちゃうのかなぁ。鵜木さんが最後に歌うところがあるんですが、リハーサルから毎回その声にうるっと涙してしまいますし、僕ら演奏者もぐっと入りこんでしまう」。

 血は繋がっていなくとも子どもを深く思う父の気持ちと、一心に親を思い続ける子どもの気持ちと‥‥。磨かれ抜いた音楽性を歌い響かせながら、とても親しみやすくて笑いも起こるステージにもご注目を。
 小山「僕らは普段のコンサートでも途中で誰かが踊ったりしているので(笑)、この作品でも自然に‥‥」

 中川「絵本の内容はとても深いけれど、涙あり笑いありのエンターテインメントとしてしっかりおみせできている。サクソフォンが、弦楽器にはまず出来ないこともやっていますので(笑)お楽しみに」
 小山「サクソフォンはもともと、弦楽器のような音色を持ちながら大きな音量が出せる管楽器、として開発されたんです」
 中川「だから、柔らかいけれど華やかで、本当に微かな弱音からオーケストラくらい迫力のある音まで出せる。今回も、とても有名な大編成オーケストラ曲が入っていますし」

 雄弁にして繊細な中川さんのピアノの表現も、その響きと歌を深く広げてくれます。言葉のないところまで、楽器が音で語ってくれているような‥‥。
 鵜木「サクソフォン四重奏とピアノ、普通なら声が消されてしまいそうなのに、皆さんは私が歌い出すと音量をすっと合わせて、声に寄り添うようにブレンドして下さるので、本当に素晴らしい」
 小山「僕らも〈音楽と朗読〉との共演とは思っていないんです。楽器と声とで、ひとつの〈アンサンブル〉」
 中川「クワチュール・ベーのみなさんと初めて共演したとき、素晴らしいハーモニーを持った合唱のように聞こえた。そしてその音楽はもちろん、音楽に対する気持ちも素晴らしい。一生一緒に演奏したい、と思えたメンバーなんです」


◆お子さんも、子どもだったことのある大人のみなさんも

 20250315Umasou_interview.JPEG鵜木「初演には、作者の宮西さんもいらして下さって『自分の作品ぜんぶ演ってほしい!』ってとても喜んでいただけました」
 中川「おかげさまで初演が大好評、全国各地でも再演させていただいたので、経験を重ねて熟成した成果を、ホームグラウンドに還ってくる今回も、一音一音に込めてお届けしようと思います」
 小山「初演のとき、7歳の息子が観に来て『ちょっと涙が出た』と言いながらずっと劇中の音楽を歌っていましたし(笑)、もう中学生になった今でも覚えてるって言ってます。子供と大人で捉えかたも変わる作品ですが、青森で再演したときは、妻の両親が観に来てくれて『大人でもぐっと来ちゃったなぁ‥‥』と」

 お子さんも、子どもだったことのある大人のみなさんも、親子連れもそうでないみなさんも、同じ空間でご一緒に体感していただきたい作品です。
 中川「泣けるけれどじめっとしない、笑える作品でもありますしね。ぜひ、みなさんお楽しみに!」