活動動画 公開中!

トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
Menu

アーティスト・インタビュー

(C)Osamu Hoshikawa

小山実稚恵(ピアノ)

小山実稚恵の室内楽・新章 第2回 小山実稚恵&矢部達哉&宮田大II

 2023年12月に第1回が終わった「小山実稚恵の室内楽・新章」の第2回が2025年2月に開催されます。小山実稚恵さんにお話をうかがいました。
[聞き手・文/中村ひろ子(プロデューサー/翻訳者)]

昨年末の第1回は、ハイドンのピアノ三重奏曲「ジプシー・ロンド」、矢部さんと宮田さんによるコダーイのデュオ、そしてドヴォルザークのピアノ三重奏曲「ドゥムキー」というプログラムでした。終わられて、いかがでしたか?

20231202concert_(C)OkuboMichiharu_R628736.jpg小山:まずはコダーイ、矢部さん・宮田さんのお二人だからと思って入れたのですが、やっぱりすごかった。プログラムとしてうまくいったなと思いました。1曲目のハイドンは、これまでにも何度か弾いたことはあるんですけれど、いやもう鮮やかで、音がこういうふうに聞こえるんだな、ハイドンて素晴らしいなと。実は、あの曲は細かい練習が何も要らなかったんです。最初のリハーサルで通して弾いて楽しくて仕方なくて、2回目のリハーサルでも1回通しただけ。あとはもう当日のゲネプロ・本番でした。何の打ち合わせも要りませんでした、ほんとに。最初に通したとき、矢部さんがこれ大丈夫、いいねっておっしゃって。大丈夫というより、素晴らしかったの、1回目から。あの曲があんなに生き生きしているのは初めてで、私の中では驚きでした。そして「ドゥムキー」は、楽章それぞれの情景が鮮やかに出てくる曲ですが、とても艶があって、色が感じられて、すごくうまくいったと思います。

名演でしたね。この企画が始まる前に、「三人全然違うんですが、わかるんです。ここはこうするんだと同じように感じ合っている。音楽の感じ方がとても似ている」とおっしゃったのが、実際の演奏を聴いて実感できました。弾き終えて戻られるときも、お三方ともにこにこしていらして。

小山:嬉しい日でした。三人で組めて、本当に幸せだと思いました。もう言葉は要らないというか。

そして第2回は、シューベルトのピアノ三重奏曲第1番と第2番。シリーズ全5回のうち、トリオだけで他の編成がないのは今回だけですね。

小山:ちょっと迷ったんです。シューベルトなら、前半にチェロとピアノの「アルぺジョーネ・ソナタ」や「ヴァイオリンとピアノのためのファンタジー」とピアノ・ソロを入れようかな、トリオだけ2曲になるとちょっと地味かな、2曲ともかなり長いし......と。でも、最初に案を出したら矢部さんが「これは食指をそそられる、ちょっと大変だけどやってみたい」とおっしゃって。1番と2番を一度に弾くことは、私もほとんど経験がありません。2曲とも長大で、特に第2番の終楽章は天国的に長いですよね。どちらもごく晩年の、とてもシューベルトらしい曲です。

その2曲を、矢部さん・宮田さんのお二人と弾かれるのは期待ですか。

20250215KoyamaMichieTrio_(C)OkuboMichiharu_S171727.jpg小山:矢部さんも宮田さんも、すみずみまで感じ切って弾かれるんじゃないかなと思います。弦楽器の方ってすごいですよね。基本は単音・単旋律ですが、常に自分の弾いていない音を想像していつも和声を感じて弾いている。それが、いっしょに弾いているとわかるんです。もちろん、矢部さん・宮田さんのお二人だからというのはありますが。弾いていて、それぞれのバランスでどの音も説得力をもって響いてくる。すごいテクニックだと思います。お二人とも、あれだけお忙しいのにいつも用意万全なんです。なんてすばらしいんだろうと感激してしまいます。

プログラムをお考えになるとき、お客様のこともお考えになりますか。

小山:第一生命ホールは、会場に来られる方たちが既に室内楽を愛しているんですよね。前回のハイドンでも、すごく細かいところまで全身を耳にして聴いてくださっているなと、弾いていて感じました。だから、あのお客さまたちならトリオ2曲というプログラムもなるほどと思ってくださるだろう、トリオの真価を聴いていただけるだろうと思いました。

第一生命ホールの室内楽の公演は、お客様の7割がリピーターだそうです。前回のシリーズからずっと聴いてくださっている方もたくさんいらっしゃって。

小山:そんなに! すごいことですね。だからあの雰囲気になるんですね。もしこれが1回だけの企画だったらトリオ2曲は冒険かもしれませんが、5回のシリーズだからこそのプログラムではないかと考えました。次の3回目はブラームス、4回目はベートーヴェンで「クロイツェル」や「大公」、最後の5回目は五重奏でショスタコーヴィチ......と、ずっと見通して聴いていただく中での、シューベルト2曲ということで。

前回聴いて、これは「奇跡のトリオ」だと思いました。常設のトリオになさいませんか。

小山:弾いていて、そんな話も出たりするくらい楽しいです(笑)。まずレパートリーをたくさん作らなくてはですね。