2021年バルトーク国際コンクール弦楽四重奏部門で第1位、2022年ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第2位、併せて聴衆賞受賞、と大躍進中のクァルテット・インテグラ。2023年から3年シリーズで、ベートーヴェン、ブラームス、バルトークの弦楽四重奏曲第1~3番を演奏します。その第1回を前に、三澤響果さんと山本一輝さんにインタヴューしました。
[聞き手/文:越懸澤麻衣(音楽学)]
「3大B」の弦楽四重奏曲!
3年間の演奏会シリーズのプログラムについて教えてください。
山本:3年間シリーズでやらせていただけると決まったときに、まず弦楽四重奏を3曲書いている作曲家としてシューマン、ブラームス、チャイコフスキーを思い浮かべました。その中でブラームスを取り上げることに決めました。でももっと何か出来ないかと思い、ベートーヴェンとバルトークの初めの3曲を同時に演奏することを思いつきました。 ブラームスは完成度という点では非の打ちどころがないような作曲家で、音に対するある種の必然を感じます。この必然こそが、このシリーズの鍵で、ベートーヴェンはそれの最たるもの。1つしかない音が選び抜かれていて、無駄が一切ない。それはバルトークにも通ずると思っています。 このシリーズでは、それぞれ単独のコンサートとしても、1つのストーリーとして歴史を感じられるし、シリーズを通して聴けば、三人の作曲家が弦楽四重奏曲というものをどう発展させてきたのかが分かるのではないかと思います。
これらの作品はこれまでにも演奏したことがありますか。
山本:ブラームスの2番とバルトークの2番だけで、あとは初めて演奏します。
三澤:ベートーヴェンの1、2、3番は初めてなのですが、後期の作品はずっと継続的に取り組んでいて、私はベートーヴェンがクァルテットのなかで一番すごい作曲家だと思っています。どこがと言われると難しいですが、ベートーヴェンにしかできない遊びや音楽の深さを感じます。
結成から7年、クァルテット・インテグラのいま
今のみなさんの人間関係はどのような感じですか。
三澤:もう気付いているかもしれませんが、プログラムを考えるのは山本くんです。山本くんは、やりたい曲や、この曲とこの曲を合わせたら面白いんじゃないか、ということをいつも考えていて、携帯のメモにいろんな組み合わせのプログラムがあります。頼りになるヴィオリストという感じですね。
山本:人間関係というと、けっこう長くやっているし、アメリカに来てからは毎日合わせをしているから、変わらないようで変わっているし、変わっているようで変わっていないというか。どんどん相手のことがわかってしまう難しさのようなものがある気がします。
2022年秋からロサンゼルスのコルバーンスクールにレジテンスアーティストとして在籍されていますね。今はどのような生活を送っているのですか。
三澤:今の基本的な生活は、演奏とレッスンと、合わせ。これがずっと毎日ある感じです。コンサートで弾く機会をたくさんいただいているのがありがたいです。今度小学校でアウトリーチも行います。ロサンゼルスの生活は、正直、食べ物以外はすごく快適です。
山本:今は寮のようなところに住んでいて、個室ですがリビングは共有しているので、ルームメイトがいて、みんな目が合えば「Hello!」と笑顔で話してくれるのが良いですね。
三澤:学校でたくさんコンサートをしているので、終わった後に「良かったよ!」と友達じゃなくても声をかけてくれて、みんないい人だなと思います。
コンクールでの活躍と今後
改めて、ARDミュンヘン国際音楽コンクールでの第2位受賞、おめでとうございます!コンクールでの演奏はいかがでしたか。
三澤:やはり演奏会とは全然違いますね。コンクールで弾くときも、コンサートのように弾こうと心がけていますけど、どうしても評価されるということが頭にあるので、細かいところが気になってしまいます。
山本:毎ラウンド終わるたびに、コンクールで弾くのは難しいなと思いました。とにかく、コンサートとは緊張の種類が違うから、どうしても守りに入るというか。テンポも速くなっちゃうし(笑)。
三澤:今回は観客に助けられた感じがありました。本当に真剣に演奏を聴いてくれて、顔から楽しんでいるのが伝わってくるお客さんもいて、そういうのを見てちょっと気持ちが落ち着きました。
今後の活動の目標をお聞かせください。
山本:長期的な目標でいうと、アメリカ・日本・ヨーロッパの3か所で演奏する機会を得たい、ということです。それは大きな目標ですけれど......。
三澤:とにかくレパートリーを増やしたいですね。まだやったことがない作曲家もいっぱいいるので。たとえばショスタコーヴィチもたくさん弦楽四重奏曲を書いていますが、私たちはまだ1曲も弾いたことがないですし、インテグラはこの曲しか弾かないという感じではなく、まんべんなくお聴かせできるようにしたいです。