活動動画 公開中!

トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
Menu

アーティスト・インタビュー

山縣 美季/片山 柊/山﨑 亮汰/尾崎 未空(ピアノ)

ごほうびクラシック 第4回

 暮らしの中に、ほっとリラックスできるひと時を音楽とともに——そんなコンセプトでお届けしているコンサートシリーズ「ごほうびクラシック」。第4回は年末スペシャル! 「ピアノ・オールスターズ」と題して、今をときめくピアニスト4名が登場します。
 第一生命ホールでは、日本最大規模のピアノコンクールであるピティナ・ピアノコンペティション「特級」の審査ステージにて、毎年若いピアニストたちが熱演を繰り広げています。12月16日に「オールスターズ」として再びホールに集結するのは、特級受賞者の山縣美季さん(2020年度)、山﨑亮汰さん(2014年度)、片山柊さん(2017年度)、尾崎未空さん(2016年度)です。コンサートでは、それぞれに思い出深い「イチ押し曲」を披露してもらいます。

[聞き手・文/飯田 有抄(クラシック音楽ファシリテーター)]

ピティナ「特級」でお弾きなった第一生命ホールで、受賞者のみなさんが一堂に会するという華やかなステージです。どんなお気持ちですか?

山﨑亮汰__トリミング縦横比4対3©The Symphony Hall .jpg
山﨑亮汰(ピアノ) ©The Symphony Hall

山﨑:歴代の入賞者が集まることってあまりないですし、僕は今海外で勉強をしていることもあり、みなさんと共演できるチャンスがほとんどないので、とても楽しみです!

片山:思い出のコンクール、思い出のホールという、共通点のある皆さんとご一緒できるなんて、すごくいい演奏会になるのではないかなと思います。

尾崎:ピアニスト同士が集まれることは、実はそう多くはありません。今回のメンバーはほとんどご一緒する機会がなかったので、お会いできるのが楽しみ。もちろん演奏はそれぞれソロですが、みなさんとコミュニケーションもはかれると思いますし、お互いに良い刺激を得られるのではないかと思います。

山縣:私は皆さんの中では、ピティナ「特級」を受けたのが一番最近ですので、今回のメンバーを伺って、「私でいいの?」と思いました。皆さんすでにとてもご活躍で、豪華な出演陣に加えていただいて驚いています。コンクールからまだ2年、でも、もう2年。皆さんと共演できるのが嬉しいです。


それぞれに選曲いただいた「イチ押し曲」への思いや聴きどころを教えてください。

山縣美季②_トリミング縦横比4対3©︎T.Tairadate.jpg
山縣美季(ピアノ) ©︎T.Tairadate

山縣:私はショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ」を演奏いたします。昔からショパンが大好きで、ショパンばかり弾いてきた割には、この作品もなかなか満足できるところまで到達するのが難しい作品です。構造はシンプルですが、なんと言ってもポロネーズのリズム感をうまく出すのが難しいのです。
最近ではショパンから少し距離を置き、シューベルトやラフマニノフなど、違った様式、違った表情をもった作品も勉強してきました。また、コンクール後にはお客様に聴いていただくコンサートの出演機会が増えたこともあり、なぜ自分がピアノを弾くのか、音楽をするのか、あらためてじっくりと考えるようになりました。
今もなお、2年前のコンクールでこの曲を弾いた動画をご覧いただいたり、コメントをお寄せいただくこともあるので、この12月に同じ第一生命ホールで弾くならば、やはりこの曲しかない、と考えました。試行錯誤を経て、作品像に一歩ずつ近づいている今の演奏をお届けしたいです。

片山:僕はドビュッシーのピアノ曲集「版画」(全3曲)を弾きます。中学3年で初めて地元でのリサイタルを開いた際にも演奏した、とても思い出深い作品です。それ以来、折々に弾いてきましたし、解釈を深めてきた曲なので、あらためて向き合いたいと考えました。
昔から、フランスの近代作品がもつハーモニーやモードの雰囲気が自分にしっくりくると感じています。象徴主義の詩人たちの影響を受けたドビュッシーの音楽には、作曲をするようになった今、大いに影響を受けています。2年前に大学院を修了してからは、ピアノを独奏する機会は減らしており、アンサンブルや作曲に時間を割いてきました。だからこそ、ピアノ専攻の頃よりは音楽に対する視点を増やすことができたので、演奏にも違いが出てきたと思います。ドビュッシーの音楽がもつ空間的・立体的な表情を伝えたいと思います。

片山柊 - トリミング縦横比4対3.jpg
片山柊(ピアノ)

山﨑:このコンサートの選曲についてご連絡をいただいたのが、ちょうどハワイで開催されていたケアロヒ国際コンクールの真っ最中でした。直前の予選でリストの「メフィスト・ワルツ第1番」を演奏し、とても良い感触を得ていたというのと、ピティナ特級でも第一生命ホールで演奏した思い出深い作品なので、ぜひこの曲で、とお返事しました。
 ピティナで優勝したときは、まだ15歳でした。当時は先生方から作品についてたくさんの教えを受け、それを吸収するのに精一杯な状況でした。自分でじっくり咀嚼する時間も持てないまま、若さの勢いに乗って弾き切ったというのが正直なところです。その後、若さだけではうまくいかなくなった時期もあり、打鍵の仕方を自分なりに徹底的に研究し、作品の理解も深めていきました。ですから、同じ「メフィスト・ワルツ」でも、10代の頃とはまた違った解釈で、音色やダイナミクスの幅を豊かにお聴かせできると思います。成長した姿をお見せしたいですね。

尾崎:私はラヴェルの「ラ・ヴァルス」をお届けします。初めて演奏したのは10代の終わり頃で、ずっと憧れを抱いてきた作品です。特級のステージでも、二次予選で演奏しました。
「ラ・ヴァルス」は、ラヴェルがもともとオーケストラ作品として書き、その後ピアノ版にした作品です。私は現在ミュンヘンで勉強していますが、ヨーロッパに来てから、さまざまなオーケストラの演奏を聴くことができました。指揮者や国によって驚くほどサウンドが異なる管弦楽を聴くことは、私にたくさんの想像力をもたらしています。ピアノ一台でこのような曲を演奏する難しさはありますが、自分の中でイメージできる音の数が増えた分、ピアノ版のスコアに書かれた音から、フレキシブルに私なりのアレンジも加えて、鮮やかな演奏ができればと思いっています。

尾崎未空 __トリミング縦横比4対3.jpg
尾崎未空(ピアノ)

ほっとリラックスできる「ごほうびクラシック」というコンサートにちなみまして、皆さんのリラックス法も教えてください。

山縣:猫と遊ぶこと。それと爆食い(笑)

片山:ファッションなど他のカルチャーにも興味があります。オンとオフをしっかり切り替えることかな。

山﨑:ウォーキングですね。歩きながら練習した録音を聴いて反省もします。あれ、リラックスになってない?(笑)

尾崎:近くにアルプスや大きな川があるので、1日とれればピクニックに行きます。

コンサートでは、オンラインフォームから応募できる「お客様からのリクエスト曲」、そして12月16日当日発表の「今年の1曲」も演奏されます。どんな曲をだれが演奏するのかは、コンサートでのお楽しみ! 年末の「ごほうび」なひと時を、豊かなピアノ・サウンドとともにお過ごしください。