優れた才能が生き生きと高く羽ばたく、その瑞々しい時間をご一緒に!
人気チェリスト・新倉瞳さんは桐朋学園大学在学中の2006年にCDデビュー、若きスターとして注目を浴びながらアルバムをつくるたびに音楽の深さとしっかり格闘し、自身の音楽を一歩一歩着実に広げてきたひとです。現在はスイスを拠点に、師でもある名匠デメンガが芸術監督を務めるカメラータ・チューリッヒで首席チェロ奏者を務めながら、クレズマーバンド(ユダヤ音楽のバンド)でも活躍するなど音楽の多彩をぐっと拡げる頼もしさ。
日本各地でもソロはもちろん室内楽やチェロ・アンサンブルなど対話の歓びをさまざまに追究する新倉さん、今回の《昼さんぽ》では俊英ピアニスト・佐藤卓史さんとの共演でチェロの〈内なる声〉を聴き手と深く共鳴させるプログラムを。ブラームスの濃く深い歌、シューベルトがチェロに似た幻の楽器・アルペジョーネに寄せて紡いだのびやかな幸せ、そして超絶技巧から溢れる情感の色と歌の力‥‥晴れやかな心と美しい陰翳の重なる90分、じっくりお楽しみください!
2006年、桐朋学園大学在学中にCDデビューしたチェリスト・新倉瞳さん。しかし華やかな活躍にも思い悩むことがあったそうで、2010年から心機一転スイスのバーゼル音楽院へ留学。名匠デメンガに師事しながら音楽を見つめ直すことで、新倉さんの芸術はいよいよ瑞々しく開花しました。「先生は『ヒトミ、とにかく自信を持ちなよ!』と。クラスの皆と〈作曲家や時代によって違うスタイルをどう弾き分けるか〉という話をしていたとき、先生が『もちろんそれも大事だけれど、まず、作曲家も人間だからね』と仰った。それだ!と思いました」
誠実に楽譜を読み、作品への共感を重ねる。不意に視界がひらけたかのように、それまで弾きにくかったところもぱっと自由に弾けるようになったという思い出の曲、シューベルト〈アルペジオーネ・ソナタ〉も今回の《昼の音楽さんぽ》で披露して下さいます。この歌心美しい傑作をはじめ、ブラームスやポッパーなどチェロという楽器のさまざまな魅力を味わえる演目を揃えた今回、新倉さんがスイス留学で広げた境地──音楽の内なる声を解き放つ幸せを、舞台と客席で共有します。
楽器演奏に興味のあるお子さんへのお勧めは?と尋ねると、新倉さんは「それはもう絶対に〈アンサンブル〉!」と即答。「〈自分が上手く弾く〉ことも大切ですが、〈共演する相手を上手く弾かせてあげる〉演奏をするのが一番の醍醐味だと思うんです」
今回も、精緻卓抜なピアニスト・佐藤卓史との共演で〈アンサンブル〉の喜びを存分に聴かせてくれるはずです!
[聞き手・文/山野雄大(音楽ライター)]