2年に一度、兵庫県養父市で開催されている「ビバホールチェロコンクール」。
昨年行われた第12回の第1位受賞者であり、12月9日(土)に第一生命ホールにて受賞記念リサタイルを開催する藤原秀章さんにお話しをうかがいました。
若手チェリストの登竜門と言われている「ビバホールチェロコンクール」ですが、受けられたきっかけは?
コンクールの存在自体は中学生の頃から知っていたのですが、その頃はすごい方たちが出場しているという漠然としたイメージしか持っていませんでした。東京藝術大学附属高校を受験する頃からいずれは出場したいなと思っていて、今回初めて出場することができました。
ホームステイの受入れやコンクール期間中のボランティアスタッフなど市民の方がたくさん参加されているのもコンクールの特徴の一つですが、何か思い出はありますか?
ホームステイ先のホストファミリーさんととても良い関係を築けたのがよかったです。
コンクール期間中は緊張状態が続くので、ほどよい距離感で接してくださったのがうれしかったです。お宅にグランドピアノがありましたので、ピアニストの開原さんも一緒にホームステイをさせていただきました。
1位を受賞された時はどんな気持ちでしたか?
それまで緊張状態がずっと続いていて結構疲れていたので、うれしかったのですがまずほっとしました。1位じゃなかったとしても同じ気持ちだったとは思いますが、いい結果で終われたことはよかったです。もちろん信じられない気持ちもありました。
藤原さんとチェロとの出会いは?
楽器自体は6歳の時から触っていて、姉がヴァイオリンをやっていたのでぼくにもとりあえず何か楽器をというだけで・・・だから弾いたり弾かなかったりでおもちゃのような感じで近くにあっただけなんです。ちゃんと先生に習って演奏家を目指すようになったのは小学5年生頃からです。
小学5年生の時に何かきっかけがあったのですか?
姉がジュニアオーケストラに通っていて、ぼくもチェロでオーディションを受けた時に母が先生から「指がすごく綺麗に並んでいるからちゃんと習わせたほうがいい」と言われて。
その時は見よう見まねで弾いていたので、先生から「ちゃんとチェロを習うならオーケストラに入れてあげる」と言われて音楽教室に通い始めました。
姉は小さい頃から音楽を真剣に習っていたのですが、母は男の子は絶対に音楽家にしたくないと思っていたみたいで、ぼくにはなるべくさせないようにさせないようにしてきたのに(笑)
本当に小さい頃から楽器を習う子が多い中めずらしいですね。
楽器を弾くのは歌を歌うのと同じで、自分の中で持っている音程感が大事なのでそれは楽器を本格的に習う前から身についていたのかもしれませんね。小さい子でも耳がいいと自分で音程を直したりできる子もいます。
リサイタルのプログラムはどのように選曲されましたか?
ブラームスの〈チェロ・ソナタ〉は、今回共演する開原さんと「いつかいっしょに演奏したいね」と話した思い入れのある曲です。コンクールで1位になったその日の夜に「リサイタルではブラームスのソナタを弾こうね!」とすぐに決まりました。
ブラームスの晩年の作品なのですが、ブラームスはシューマンの奥さんを愛していたと言われていて、心に秘めた恋を表しているような明るいけれど切ない部分があったりするので、聴いている方はご自身のそういった想い出と重ね合わせて聴いていただいてもよいと思います。
ベートーヴェンはモーツァルトの「魔笛」をモチーフにした曲ですが、チェロで『歌う』ように演奏したいと思います。また、ベートーヴェンのモーツァルトへの憧れみたいなものを感じてもらえればと思います。
カサドの<無伴奏チェロ組曲>は「チェロといえばこの曲!」という1曲です。チェロという楽器の端から端まで魅力を引き出してくれるような作品なので、チェロ1人でここまでできるのかという部分を味わってもらいたいです。
ストラヴィンスキーはリズムの面白さとか愛らしさとか、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさがあります。コンクールでも弾いたのですが、ビバホールでもリサイタルがあるので、養父市の方々にも楽しんでいただけるように選びました。
大きなホールでソロのリサイタルをするのは初めてなので、やはりチェロの名曲を聴いていただきたいなと思って、シンプルなプログラムでチェロの魅力が伝わるような、かつ自分が弾いていてしっくりくる曲を選びました。
楽しみなプログラムですね!
最後に、演奏家として今後どのような活動をしていきたいと思っていますか?
オーケストラや室内楽など様々な演奏の場がありますが、どんな演奏者になったとしてもライフワークとしてずっとソロでの自分の音を聴いてもらえるような演奏者になりたいです。自分のスタイルや自分にしかできない演奏を目指して、自分の理想の演奏をずっと追い求めていきたいです。生涯進化し続けられたらいいなと思いますね。
自然体で「音楽」と向き合い、演奏することを心から楽しんでいて、それをみなさんと共有することに喜びを感じているような印象を受けた藤原さん。
今後の活躍が期待される藤原さんと開原さんの「今」をぜひお聴きください。
【番外編】
藤原さんにコンサートとはちょっと離れて、気になる質問をしてみました。
楽器の習得には根気がいると思いますが、今習っている子どもたちに何かアドバイスをお願いします。
自分がいいと思ったり好きだと思う演奏を見つけたり、「自分のものさし」を持つということが大事かなと思います。人からどう評価されるとか、誰かがいいと言っていたとかではなく、自分の価値観を大事にしてほしいなと思うことがよくあります。そうすると自分は今どんな練習をするべきなのかとかが明確になると思います。頑固になるとは違うのですが、人から何か言われたときに、なぜそう言われたのか?ということを自分の中で消化して自分の内側に一回通すといやな気持ちにもならずに楽しいと思います。練習は自分で必要だと思ってやれば楽しいし、人から言われてただやるだけだとつらいですよね。
音楽以外にはまっていることはありますか?
絶叫マシンが大好きです!頭のモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような気がするので。一番好きなのは富士急ハイランドのドドンパです!東京なら後楽園のジェットコースターがおススメです。高校の頃は試験が終わった後はみんなで遊びに行ってました。また、最近はユーチューバーの動画をよく見ています(笑)
【聞き手・文/トリトン・アーツ・ネットワーク】