シューベルトの晩年の作品、それもどちらも長調の大曲を一公演で演奏すること、聴いていただくということに興味がありました。シューベルトは、最後のこのあたりの作品でまた作風が変化してきています。この「弦楽四重奏曲ト長調」と「弦楽五重奏曲ハ長調」は、類似点があるような全くないような、聴いていていろいろなことを考えてしまう作品で、ますますシューベルトの天才性、繊細さ偉大さに感動します。
弦楽五重奏曲で共演するのは、往年の名カルテット、メロス弦楽四重奏団のチェリスト、ペーター・ブック氏です。以前にも「カルテット奏者として第一線で世界各国で演奏してこられた方との共演ほど生々しい感動を伴い他方面において学ばせてもらえる機会はない」とメッセージをいただきましたが、その具体的な例を教えていただけますか。
第一線で活躍してこられた方のオーラ。とにかくオープンで前向き、寛容で優しく温かい素晴らしい方です。共に舞台に上がり、共演している際に感じる、口では説明できないなんとも大きな熱いオーラに経験の数を感じます。
弦楽四重奏団としてクラシックの本場であるヨーロッパに拠点を置き、活動していこうと決意したきっかけはありますか。
留学してまもなく参加したいくつかの国際コンクールで多くの同世代のいろんな団体の演奏を聴く機会があり、弦楽四重奏曲の素晴らしさに改めて感動し、本気でこの分野で活動していきたいと切望している同士がたくさんいることに、喜びとやる気を得たことがきっかけです。
私たちが受けた一連のコンクールの最後が、イタリアのパオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで、この時に第3位とベスト現代音楽演奏賞を受賞しました。1位を取れば30回ほどの世界各地の演奏会の約束つきという、活動を始めたい団体には最もやり甲斐のあるコンクールです。ヨーロッパ各国の音楽事務所の方が聴きにきていて1位でなくとも良いと思った若い団体をスカウトしたり、演奏会の場を提供したりします。幸い私たちもこのコンクールでの入賞がきっかけで音楽事務所が決まり、ヨーロッパでの演奏活動を開始することができたのです。
活動の拠点とされているシュトゥットガルトでは、街の人々にとってロータス・カルテットは、どのような存在だと思われますか。
弦楽四重奏はオーケストラのように州や街に存在するものではないですし、一昔前とは違って演奏家たちもテリトリーを持たず自由に旅をして飛び回るようになりましたからあまり実感はありませんが、シュトゥットガルトの街のホームページには『この街の演奏家コーナー』にロータス・カルテットのプロフィールなどの紹介が載っています。(街のみなさんには)私たちの演奏と音楽体験を共有したいなと思ってもらえるカルテットでありたいですね。
シューベルトの遺作2曲というプログラムを、貴重な師弟共演で聴くというまたとない機会。
どうぞお見逃しなく。