三浦:学生時代にホルンと共演したときは「音量がとにかく大きいのでピアノは全然抑えないでいいから」と言われたものですが(笑)、福川さんのホルンは弱音の限界まで挑むもの。ホルンは柔らかい音からぱりっとした最強音まで幅広く出せますし、音色も豹変する。合わせるピアノも、エッジを効かせた音色から角のない音色まで、いろいろ変化させなければいけません。これは弦楽器などの共演とは違う特徴ですね。
福川:ベートーヴェン〈ホルン・ソナタ〉は1800年代前半、作曲家が活躍した当時に作られたナチュラル・ホルンで演奏します。柔らかい繊細な音を、現代のホルンと聴き比べていただきたいですね。
三浦さんのソロでショパンも。
三浦:今回は激しく胸に刺さる曲が多い中、お昼にふさわしくほんわかした〈バラード第3番〉を(笑)。ショパンが好きな変イ長調...私の勝手なイメージでは、薄紫色のイメージ。
鈴木優人さんの新作〈モーツァルティアーナ〉も楽しみですね。
福川:彼は尊敬する大親友で、指揮に作曲にと素晴らしい活躍をしながら、どんな時代のスタイルも知っている人。彼がモーツァルトのホルン協奏曲をもとに、おもしろいことをいろいろやってくれる新作です。
酒井健治さんの〈告別〉は再演になります。
三浦:再演を重ねると複雑なリズムも身体に入っているので、また別の表現の作り方もできますね。
福川:聴くとすぐ違う世界へ連れていってくれる作品。ベートーヴェンでもナチュラル・ホルンでお聴きいただく自然倍音がここでも意識されて、微分音が使われています。関連も感じていただけるかと。
三浦:酒井さんは感情に任せて書くタイプではなく、どの音にも必ずなぜそう書かれたかという理由と背景があるんですよ。譜面がいくらややこしくても(笑)、ちゃんと弾きたいという気分になるんです。
最後はローゼンブラット〈カルメン・ファンタジー〉。
福川:ノリもいいし聴いてて絶対楽しい曲です。むずかしくて、練習するのに昨年の夏休みをまるまる潰しましたが(笑)。
三浦:共演するたびに「なんで私たちはこんなに苦労してチャレンジしてるんだ?」と思うくらい新しい曲をいれたがる人たちなので‥‥(笑)。
[聞き手/文 山野雄大(音楽ライター)]