クァルテット・エクセルシオ(以下エク)が、ゲストを迎えて弦楽四重奏の可能性の拡がりをおとどけする「Quartet+(プラス)」シリーズ、4回目の今年は、ハープの吉野直子さんと共演します。
大友:前に何度かご一緒しており、シリーズ当初から、ぜひと思っていました。ハープと演奏できる曲がこんなにあるんだということも少しずつ勉強させていただいて。
山田:再演のチャンスをねらっていました。
フランスものでまとめた素敵なプログラムです。
西野:私たちはハープと弦楽四重奏のオリジナル曲をあまり知らないので、何かいい曲はありませんかと吉野さんにお伺いして。
吉野:ドビュッシーの「神聖な踊りと世俗の踊り」は逆に提案して頂きました。本来はハープと弦楽オーケストラとの曲ですが、もちろん、弦楽四重奏とも演奏できますしバランスもいいですね。
大友:響きがぱっと華やかで、プログラムの最初にぴったりです。
吉野:次にドビュッシーの弦楽四重奏曲という流れがいいですよね。
休憩をはさんでフランセの弦楽四重奏曲ですね。
西野:これは今回、私がフランス系の作曲家をしらみつぶしに探して見つけました。
大友:フランセが弦楽四重奏曲を書いていたとは、我々も知りませんでした。
西野:もともと第一生命ホールでやってきた「ラボ・エクセルシオ」で、実験的にめずらしい作品開拓をしていた延長で、他では聴けないような作品に取り組んでみたいという意識が皆どこかにあります。
マリピエロの「5つの楽器のためのソナタ」は、吉野さんからの提案なのですね。
吉野:カプレの「幻想的な物語」と同じように、少し異色で、お客さまにとっても聴きやすい曲として出しました。弦楽四重奏とでも演奏できますが、もとはハープ、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成です。単一楽章ですが、次々と場面が変わっていき、それぞれの楽器が独立して動くところもあり、響きもきれいで。
最後に、以前も共演しているカプレの「幻想的な物語」ですね。
吉野:フランセでちょっとおしゃれな感じで、マリピエロがきれいな中にユーモラスな響きもあって、そしてカプレでいきなり、おどろおどろしく...
大友:ダーンとね。
これはエドガー・アラン・ポーの短編小説「赤い死の仮面」の物語が下敷きとなっています。
吉野:大時計が12回鳴るシーンや、舞踏会のような場面があったりします。
山田:「赤い死」に駆け寄るシーンで、ハープの響版を叩くところがありますね。物語を読んでおくと、あの場面なのかなと想像しながら聴けますね。
吉田:怖い話なのですが(笑)。でも物語性があるからこそおもしろい。
吉野:ハープ奏者にとっては、弦楽四重奏との共演では、はずせない名曲です。
大友:5人の奏者のやり取り、アンサンブルが楽しめる、まさに五重奏という聴き応え、弾き応えがある曲ですね。
吉野さんに、エクの皆さんの印象を伺えますか。
吉野:いつも、とても楽しく共演させていただいています。エクは常設のクァルテットで、リハーサルでも4人でお互いの意見を言い合って、ひとつの音を作っていくという形ができているので、私はそれに乗って演奏すればよいし、そういう意味でのやりやすさもあります。
エクから吉野さんと共演する意気込みをお願いします。
吉田:聞き惚れつつ。見とれつつ。共演させていただけるのはうれしいです。
西野:舞台で演奏なさっている時でも、空気が癒しで溢れているのですが、その中にきりっとしたカッコよさもお持ちです。今回はハープとの共演ですので、ハーモニーから見える音色を存分に楽しんでもらえればいいなと思います。ですからクァルテットとしては、普段の4人で演奏する時とは全然違う感覚も持って、音色づくりをしたいと思っています。