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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

©EMI CLASSICS

上原彩子

音楽のある週末 第16回
上原彩子ピアノ・リサイタル

「音楽のある週末」11月に登場するのは、チャイコフスキー・コンクール、ピアノ部門に女性として、また日本人として初めて優勝した上原彩子さん。コンクールから11年、満を持してオール・チャイコフスキー・プログラムに挑みます。

満を持して挑むオール・チャイコフスキー・プログラム

ピアノ・リサイタルで、すべてチャイコフスキーというプログラムはめずらしいですね。

私も初めて挑戦します。お客様にとってもなかなか聴く機会がないだろうと思い、決めました。2時間のリサイタルをとおして、ひとつの世界として楽しんでいただけるのではないかと思います。先日、初めてすべてラフマニノフのプログラムでリサイタルを組みましたが、一人の作曲家を色々な角度から勉強できるので、私も取り組みやすいですね。
まず、「四季」が、大きすぎない第一生命ホールにぴったりだと思いました。「四季」は「1月」から「12月」まで12曲からなる曲集。これまでもアンコールなどで、一部を弾いていますが、この機会に全曲を弾きたいと選曲しました。

ヤマハのマスタークラスで、ロシア人のゴルノスタエヴァ先生に師事されていました。

10歳の頃、彼女に習いはじめてすぐにもらった曲が、「四季」の「5月」でした。5分くらいの曲なのですが、何時間も何時間も、何回も何回も「やり直し」と言われて。1曲のレッスンで3時間くらい(笑)。楽譜に先生から言われたことを全て書いていたら、音符が見えないくらいになってしまった想い出があります。曲の背景もよく話してくださいました。5月はロシアでは白夜なのですが、日本にいたら分からないですよね。ロシア音楽の裏にあることなど、全部伝えようとしてくださっていました。先生には「自由に(弾きなさい)」「音を歌う」ともよく言われました。

「グランド・ソナタ」は、チャイコフスキー・コンクールに優勝した後、デビューCDでも演奏されています。

とても好きな曲だったので、16歳くらいの時に、先生から練習してくるように楽譜をもらった時、すごくうれしかったのを覚えています。コンクールの後によく演奏しましたが、あれからしばらく弾いていなかったので、また新しい気持ちで取り組めると、私も楽しみにしています。

ピアノの調律師のご主人様との間に、女の子が3人。仕事と育児の両立は大変ではないですか。

演奏家は、毎日決まった時間に会社に行ってということもなく、時間に比較的自由がきくので、そういう意味では楽です。娘たちが家にいる時は練習しません。保育園に行っている間だけです。だから、練習日は土日をのぞく週5日。祝日があると週4日しか練習できません(笑)。小さい頃は何時間も練習しましたが、今はその積み重ねがあるので、弾かない日があっても大丈夫です。

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実際にお会いすると意外に小柄で、どこからあの豊かな音楽が湧き出てくるのかとびっくりです。「四季」「グランド・ソナタ」の大曲2作品に加え、チャイコフスキーの代表作バレエ「くるみ割り人形」の小品も楽しみです。コンクールに優勝する前から、その作品が大好きだったという上原彩子による、チャイコフスキーの世界をたっぷりとお楽しみください。

[聞き手/文 田中玲子]