3月17日、第一生命ホールでのクァルテット・ウィークエンドに出演する古典四重奏団が、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲全3曲に挑みます。チェロの田崎瑞博さんにお話を伺いました。
今回チャイコフスキーをテーマに選ばれたのは?
弦楽四重奏曲を全部で3曲まとめて書いており、1回の演奏会で取り上げられること。それぞれ素晴らしい作品であること。チャイコフスキーは交響曲やバレエ音楽など色々な分野で成功した優れた作曲家であり、弦楽四重奏にも魅力が満載です。
サブタイトルは『チャイコフスキー氏からの手紙』です。
チャイコフスキーはとても筆まめで手紙を多く残しており、そこに自分の内面的なこと、音楽のこと、他人の作品や演奏、自分の作品についてもたくさん書いています。また、音楽の上でも弦楽四重奏というジャンルは、オーケストラ曲に比べ、内的な告白の部分が強いので、「手紙」という感覚があてはまるのではないかと思います。作品は、まさに作曲家からの手紙ですから、心を込めて読み取って演奏したいと思います。
古典四重奏団としては、楽譜に向かい合う前に、そのような手紙や文献を色々と読んで作品にアプローチされるのですか?
できるだけ読むのですが、現場には持ち込みません(笑)。作品は作品で、作曲家本人とは分けて考えています。
実際にこれら弦楽四重奏曲を演奏してみて、どのようにお感じになりますか?
2つに集約するなら、1つは旋律の美しさ。例えばバレエ音楽で、たわいもないちょっとした動作や場面転換の心理描写などにも、非常に美しい音楽を書くのです。何もかもが綺麗です。だから、実はピアノの小品や歌曲などもすごく良い。弦楽四重奏曲ももっと書いて欲しかったですね。もう1つは、ロマン派音楽の特徴でもありますが、感情の表出です。悲しくても嬉しくても、閉じ込めておけないほど、ほとばしり出る。醍醐味の1つです。
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有名な交響曲「悲愴」や「白鳥の湖」「くるみ割り人形」などのバレエ曲は聴いたことがあっても、弦楽四重奏曲は、第1番の第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」しかご存じないという方も多いかもしれません。ただ、 聴けば「確かに、これぞチャイコフスキー!」とご納得いただけると思います。ぜひチャイコフスキーの内なる声をお楽しみください。
[聞き手/文 田中玲子]