平日お昼の60分で気軽に音楽を楽しめるシリーズとして好評をいただいている「昼の音楽さんぽ」。日本人で初めて第5回リスト国際ピアノコンクールで優勝し、その後もソロやアンサンブル等で活躍をしている岡田将さんにお話をうかがいました。
ピアノを小さい頃から習っていたという方は多いと思いますが、岡田さんがピアニストになろうと思ったのはいつ頃ですか?
初めて思ったのは小学校5年生の時です。ラジオで、ルービンシュタインが弾いていたショパンのノクターンを聴いて、音楽で初めて感動を覚えたのがきっかけです。その時は誰が弾いているかわからなかったのですが、高校生くらいのにいろいろとCDを聴いていて、「この演奏だ!」と発見しました。しかし、ピアノと職業というのが結びつかなかったので、具体的にピアニストになろうとは思いませんでした。でも、気づいたら今ではこうしてみなさんの前でピアノを弾くことができてうれしいです。
音楽は練習を続けることが大切ですが、子どもの頃にピアノを練習するコツはありましたか?
親があまり練習に口を出すことはありませんでしたから、僕は自分でああしよう、こうしようと考えて練習をしていました。大人に言われると自分で考えることをやめてしまうので、子どもは放っておいて遠くから見ているのが一番いいと思います。
今回の「昼の音楽さんぽ」のプログラムはピアニストとしても有名な作曲家の作品が多いようですが。
そこはあまり意識していませんでしたが、そうですね。「鐘」をテーマにして、弾いてみたいと思っているものを選びました。音楽は形が見えないですが、いろいろ想像していただきたいですし、演奏者は形が見えるように演奏しなければいけないかなと思っています。
2007年から日本に戻られて活躍されていらっしゃいますが、そのままドイツで活動をされることも考えていましたか?
場所にはこだわりはないです。以前はけっこういろんなことに固執をしていたんですよね。それが生きる上ですごく邪魔をしているような気がして。ヨーロッパにいる時も、西洋音楽をやるならここじゃなきゃダメだってずっと思ってきたんですけど、ある時、むこうでついていた先生に、「音楽はどこでもできる。求められているところがあなたの生きるところだ」と言われました。それで考え方が自由になりました。
たしかに、音楽は世界中どこへ行っても変わらないですよね。最後に、「昼の音楽さんぽ」の楽しみ方をひとことで。
僕は、クラシック音楽でもそんなにかしこまって聴かなくてもいいと思っています。たとえば、小学校へ行って演奏する時に子どもたちはすごくかしこまって聴いてくれます。でも寝そべって聴いてくれてもいいと思っています。コンサートホールでもステージと客席に分かれず、演奏者が真ん中にいてそのまわりをぐるっと囲むようにお客様が聴いているとかできれば楽しいですね。とにかく自由に心も服装もラフな感じで音楽を楽しんでください。
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気さくで自然体な岡田さんのスケールの大きな演奏をお昼のひと時にお楽しみください。
[聞き手/文 櫻井あゆみ]