田崎:「ラズモズクスキー弦楽四重奏曲」(以下「モズク」)は、今回の公演のための作品なのですよね。
TSK:そうです。私はクァルテット作品をこよなく愛しています。トリトン・アーツ・ネットワークが企画されている「SQW」シリーズにいつも心動かされ、今回このように複数の四重奏団が出演するという素晴らしい機会にぜひ演奏していただきたい、そんな思いから書き上げました。
田崎:この曲名の由来は?
TSK:私の祖先の遠い遠い親戚のキンスキー侯は、ベートーヴェンの庇護者でした。ラズモフスキー侯やロプコヴィッツ侯と同じ立場です。ラズモフスキー侯がベートーヴェンに依頼して出来た3曲の弦楽四重奏曲、それらは「ラズモフスキー第1・2・3番」と今でも呼ばれ続けているのです。なんという名誉でしょう! そのことを私の祖先はとてもうらやましく思い、またもちろん作品にも敬意を表していたのです。私はその思いを引き継いでいるのです。
田崎:とすると、この「モクズ」、失礼、「モズク」はオマージュだったのですか。私はてっきりパロディだと思って練習していたのですが。
TSK:いいえ、オマージュです!!
田崎:まあそのあたりはお客様に判断していただきましょう。「モズク」は第1番から第3番までありますが、構成のご説明を。
TSK:各曲とも、原曲の「ラズモフスキー」の1,2,3番のそれぞれに対応していて、どれもオリジナルの楽想から入ります。ところが書いているうちにどんどん楽しくなっちゃって・・。
田崎:おっと、つまりパロってしまったんですね、やっぱり。
TSK:面目ありません。第1番から書き始めたのですが、有名メロディが次々と私を誘惑して来るんです。私は結局誘惑に負けてしまうんですが、それがどうしてこうもうまく繋がってしまうのか・・・。第2番はヴァリエーション風です。ハイドンの皇帝の2楽章のように、第1ヴァイオリンが変奏し、他のパートが旋律を担当するのです。
田崎:では終曲の第3番は?
TSK:ラズモフスキー第3番の終楽章のように対位法を駆使しています。
田崎:バッハのメロディが次々と聴こえてくる気がするのですが。
TSK:そう! ベートーヴェンがそうであったように、私もバッハを愛しているのです。