プログラムの意図、込められた想いを教えてください。
白井&ヘル:「花」についての歌はたくさんあって、花がみせる表情や、それに託す人の気持ちなど、花に寄せる詩にはさまざまな作曲家が曲をつけています。それを組み合わせて音楽の花束を作ろうとしている時に、東日本大震災のニュースが飛び込んできたのです。結果として「花」の曲が少し減ってしまいましたが、日本は私たちにとってとても近い国なので、日本のことを考える日々が続く中で、今回の私たちのプログラムでは「希望」や「故郷」についても歌いたい、という気持ちになりました。
それぞれの曲が生まれた時代に、作曲家や詩人が思い描いたそれぞれの「希望」があります。現代では、私たち二人も含めて、各々が直面していることー健康のこと、生活のこと、そして震災のことーが当時とは違ってくるとは思いますが、直接の「希望」をただ投げかける、というより、そこに歌われている「希望」ということへの観念が何かのかたちで届きますようにと願っています。
歌とピアノの役割が対等なリートデュオを確立してこられました。リハーサルはどのように?
白井&ヘル:リートというのは「その音楽と言葉から、何が描かれているのかを読み取る」のが仕事です。詩と音楽にはもともとそこに描かれていることのエネルギーがあって、それをいただいているわけですが、私たちはその感じ取り方が近いと思います。
ピアニストは言葉が好きで文学に興味があり、歌い手はピアノの音色が大好きで一人で歌うのではなく一緒に音楽をしたい。リハーサル前には、それぞれ自分一人で出来る仕事をしておきます。自分の責任は自分で持つ、という感じです。
第一生命ホールで演奏していただくのは初めてかと思いますが、日比谷のお堀端にあった旧第一生命ホール(1989年閉館)の想い出がありましたら、教えていただけますでしょうか。
白井:実は、旧第一生命ホールは、私が長野の臼田から出て来て最初に歌のリサイタルを聴きに行った所です。師事していた多田光子先生のリサイタルに、家族そろってうかがいました。大学に入ったばかりで、しかも、教えていただいている先生のリサイタルということで、とても緊張して出かけたものです。それからは何度も何度も旧第一生命ホールのコンサートに通いました。今回を機会にいろいろ懐かしく思い出しています。
〔聞き手・文/田中玲子〕