7月の「昼の音楽さんぽ」に登場するチェリスト趙静さんは、北京生まれながら、東京音楽大学付属高校に留学生特別奨学生として招かれたこともあり、日本語も自在。居を構えるベルリンと日本とを往復する忙しい日々の合間、わずかに取れた時間でお話を伺うことができました。
今回のプログラムのメインはメンデルスゾーンですね。
趙 :無言歌はもともとチェロのために書かれた曲ではありませんが、どれもすばらしく、昔から大好きな曲ばかりです。先日もチェロのために編曲された楽譜を見て惚れ直しました。何回も他のコンサートで弾いていますが、皆さんもよくご存じのメロディーで喜んでくださるし、私自身も弾いていて幸せになります。チェロ・ソナタは2曲ありますが、メンデルスゾーン独特の美しさが出ていてすばらしい曲です。
ベートーヴェンのソナタは、ピアノが松本和将さんだからこその選曲なのですね。
趙 :ベルリンに留学中、私たちが最初に組んだ頃、演奏し身体に染み込んだ大事なレパートリーです。この曲で(名チェリストの)故ロストロポーヴィチさんのレッスンを受け、人生の中でもすばらしい経験をしました。松本さんは、情熱的で、演奏家として自分の考えを持っていながら、すごく柔軟性があってすばらしいピアニストです。
日韓中友好特別記念「友情の架け橋コンサート」では、チョン・ミョンフン(韓国出身の指揮者・ピアニスト)や樫本大進(ヴァイオリニスト/ベルリン・フィル第一コンサートマスター)と共に、皇太子さまと室内楽を演奏されました。
趙 :殿下は、やはり一目ではっとするようなオーラをお持ちの方。音楽を本当に愛していらっしゃるし、音楽で世界との友好関係を作りたい、音楽には国境がない、というお気持ちが伝わってきて感動しました。
趙静さんがチェロを始めたきっかけは?
趙 :京劇の胡弓奏者である父が弦楽器の大ファンでした。父の子どもの頃は文化大革命でクラシック音楽が禁止されていたので、娘には絶対やらせたいと思っていたそうです。4歳の時、父に連れられ北京音楽院の入学試験に行きました。本当はヴァイオリンクラスの試験を受けるはずが、先生が病気で中止になって、隣のチェロの教室へ。父は音楽を勉強するのなら早ければ早いほどいいと分かっていて、チェロも本当に美しくすばらしい楽器だからと試験を受けさせたところ合格しました。その時からチェロは大好きで、いやになったことは一度もありません。
楽器を習っているお子さんに何かアドヴァイスはありますか?
趙 :子どもが自然と音楽に興味を持てるようにするのがいいと思います。私の場合、3歳の頃から父が京劇の歌や中国の民謡などを教え、色々なジャンルの音楽を聴かせてくれました。
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ホールに来られない方へ演奏を届ける「アウトリーチ」にも興味があり「チェロがどんな楽器か知ってもらえて、近くで聴いて感動してもらえたらうれしい」と、近隣の小学校へも訪れる予定です。彼女のあたたかい笑顔そのままの、懐の深い音楽をお楽しみください。
[聞き手/文 田中玲子]