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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

アウトリーチ
室内楽アウトリーチセミナー
室内楽アウトリーチセミナー

アウトリーチセミナー講師と受講生による はじめてのクラシック(弦楽四重奏)
 中央区立阪本小学校
 中央区立京橋築地小学校
 中央区立中央小学校

基本情報

日時 中央区立阪本小学校
2021年12月6日(月)10:45-11:30/11:35-12:20

中央区立京橋築地小学校
2022年1月12日(水)
9:30-10:15/10:35-11:20/11:25-12:10

中央区立中央小学校
2022年3月7日(月)
9:40-10:25/10:45-11:30/11:35-12:20
出演 松原 勝也/森 麻祐子(ヴァイオリン) 小松 あかね(ヴィオラ) 丹野 陽介(チェロ)
概要 ■中央区立阪本小学校 対象者:4年生1クラス・5年生1クラス:計52名
■中央区立京橋築地小学校 対象者:4年生1クラス・5年生2クラス:計79名
■中央区立中央小学校 対象者:4年生2クラス・5年生2クラス:計89名

助成等:文化庁 文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会

レポート

【プログラム】
♪ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op.95 「セリオーソ」(全楽章)


【レポート】

昨年12月、アウトリーチセミナー(※)の一環として、中央区立阪本小学校4、5年生を対象に弦楽四重奏のコンサートを行いました。
出演は、セミナー講師の松原勝也さんと、受講生の森麻祐子さん、小松あかねさん、丹野陽介さん。まず、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」第1楽章を演奏すると、一気に集中して、食い入るように聴いていた子どもたちから「すごかった!」「歌に巻き込まれたみたい」と声があがります。☆☆IMG_2333 - コピー.jpg子どもたちの感想を聴いて、今度は演奏家の方はどう思っていたかを説明。4人が同じイメージを持っているのかと思ったら、意外にも「嵐の中を前に進んでいるみたいな感じ」「細い糸がぴんと張って今にも切れそうな…」とそれぞれが違うことを感じていると発見! 「言葉ではうまく言い表せないこともあるので」と、次は演奏家がそれぞれ描いた絵やイメージに合わせて用意してきた写真などを見てもらいます。
「天から光が差しているようなところがある気がして、この写真を」「現実と夢を行き来している気がして、現実を表すものがこれ(新聞)、夢を表すものがこれ(真っ黒なフェルト)」など、こちらもイメージが色々。☆☆IMG_2315.jpgここで最初に演奏した部分(第1楽章)は4つの曲(楽章)のうち最初の1曲であることを説明し、絵や写真を見ながら、第1楽章から第4楽章まで、冒頭を少しずつ演奏して紹介しました。楽章ごとに自分のイメージに近い絵を探してみたり、ただ写真をぼんやり見ながら音楽を聴いてみたり……色々なことを感じた後、最後は絵や写真は見ずに、自由に第1楽章から第4楽章まで20分間通して聴いてもらいました。45分間のアウトリーチで、弦楽四重奏曲を全曲聴いてもらうことはあまりないことですが、演奏後も「空気全体に音楽が満ちあふれていた」と言う子がいるなど、先入観なしにまっすぐに音楽を受けいれてくれた様子に、演奏家側もあらためてアウトリーチの意義を実感しました。

(※)アウトリーチセミナーとは
2011年より松原勝也氏(ヴァイオリニスト/東京藝術大学教授)を講師として、若い弦楽器奏者を対象に開催しています。講師と弦楽四重奏を組み、プログラムを考え、何度もリハーサルを重ねて、小学校で実際にアウトリーチを行い「子どもたちの心に本当に残る音楽とは何か」を1年間考え続けることで、受講生にとっても、今後の演奏家としての活動に深く影響を与えるセミナーとなっています。

(阪本小学校:トリトンアーツスタッフ 観察レポートより)


子供たちの大きな拍手に迎えられ、弦楽四重奏の演奏が始まりました。
今回のアウトリーチで取り上げた、ベートーヴェン作曲の「弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op.95『セリオーソ』」のうち、まずは第1楽章を演奏しました。
生の弦楽器の迫力に、子供たちも食い入るように聴いていました。

最初の演奏が終わった後、演奏者一人一人の自己紹介がありました。
その後、演奏者の「音楽を聴いて、感じたことがあったら教えてください」という言葉に対し、「音が強いところと弱いところがあった」「音が滑らかだった」などの子供たちの感想があり、いかに子供たちが集中して音楽に聴き入っていたのかが伝わってきました。

☆IMG_3853.jpg

子供たちの感想を聞いたのち、今度は逆に演奏をした人がどういうことを考えながら演奏をしているのかを聞きました。
人によっては布にくるまれたり、痛みを感じたり、真っ白な紙の上に音楽が重なっていったりと、同じ音楽を演奏する中でも、毎回いろんなことを考えながら演奏をしているのだということを知ることが出来ました。

そして次に、子供たちを囲むようにして飾られている作品にスポットが当たりました。
実は、20近く飾られた絵や写真は、今日演奏する曲をイメージして演奏者の人たちが用意したものだったのです!
その中でも、立体物や宇宙みたいな絵など、子供たちが気になった作品を取り上げて解説をしていく中で「同じ音楽の中でもこれだけ表現の仕方が違うんだよ」というメッセージが込められていたように感じました。

☆IMG_3827.jpg

曲を構成している1楽章~4楽章の各冒頭を演奏した後、最後に改めて1曲通して演奏をしました。
1曲全部を通すと20分もある聴き応えのある曲を、子供たちは絵を見ながら聴いたり目を閉じながら聴いたりと、それぞれの楽しみ方をしていました。
最後に演奏者が感想を聞いたところ「繰り返しが入ってた!」「森の中を冒険しているみたいだった」など、1曲全体を通したからこそ感じた言葉が子供たちから出ていました。

☆IMG_3856.JPG

「演奏者がどう思って演奏しているか」「飾ってある絵や写真のように、同じ楽曲でもこれだけ表現方法がある」などの事例がきっかけで、子供たちの感受性を更に豊かにした状態で音楽を聴くことができたのではないかと思います。
感想としてすぐに言葉にできなくても、今回のアウトリーチを通して、子供たちの中でいろんな感じ方が出来た貴重な経験となったのではないでしょうか。

(京橋築地小学校:トリトンアーツサポーター 久保田 菜未 観察レポートより)


【子どもたちのアンケートより】
●1つ目(第1楽章)は冒険に行くという感じで、2つ目は何者かにしゃべりかけて、その人は魔王だったみたいな感じで、3つ目は魔王から逃げるみたいな感じで、4つ目は帰れたーって思った
●色々な絵を見た時、一人ひとり色々な気持ちで弾いているのがわかりました
●曲の中に引きずり込まれていく感じがして、夢中になって時間を忘れました。気持ちが透きとおるような時間でした
●音楽には言葉では伝えられないことがいっぱい詰まっているんだなと思った

プロフィール

松原 勝也(まつばら かつや)ヴァイオリン  
東京藝術大学在学中に安宅賞受賞。ティボール・ヴァルガ国際コンクール、クライスラー国際コンクール等で上位入賞。1989年~98年まで新日本フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターを務める。ソリストとして新日本フィル、東京フィル、東響などと共演。2001年よりNPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール主催の若い演奏家のための弦楽セミナー《アドヴェントセミナー&クリスマスコンサート》を、2011年より《アウトリーチセミナー》をプロデュース。第17回中島健蔵音楽賞、第55回文化庁芸術祭新人賞受賞。静岡AOI・レジデンス・クヮルテット、クァルテット・アーニマメンバー、長崎OMURA室内合奏団アーティステックアドヴァイサー、東京藝術大学音楽学部教授。
森 麻祐子(もり まゆこ)ヴァイオリン  
愛知県名古屋市出身。4歳より、アメリカにてヴァイオリンを始める。第66回 全日本学生音楽コンクール名古屋大会中学校の部 第3位。第21回姫路パルナソス音楽コンクール入賞。2018年ウィーン国立音楽大学ムジークセミナーディヒラーコンクール第3位。第11回岐阜国際音楽祭コンクール弦楽器部門一般Ⅰ部門第1位、併せて優秀賞、文化人特別賞を受賞。現在ヴァイオリンを植村太郎、山﨑貴子各氏に師事。名古屋市立菊里高等学校音楽科を経て、東京藝術大学を卒業。
小松 あかね(こまつ あかね)ヴィオラ  
4歳より桐朋学園大学附属子供のための音楽教室へ入室し、研究科修了。桐朋学園大学卒業。第21回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール審査員特別賞受賞。第25回、第27回日本クラシック音楽コンクール全国大会入選。第72回TIAA日本クラシック音楽コンサート奨励賞受賞。ウィーン国立音楽大学夏季セミナーにて、ディプロマを取得。これまでにヴァイオリンを中島郁子、石井志都子、ヴィオラを岡田伸夫、篠崎友美、室内楽を名倉淑子、久保田巧、加藤真一郎、長谷川陽子、山崎伸子、伊藤亮太郎の各氏に師事。現在、ソロ、室内楽等の演奏活動の他、島村楽器にてレッスン開講中。
丹野 陽介(たんの ようすけ)チェロ  
都立芸術高校、東京音楽大学卒業。霧島国際音楽祭にて堤剛氏のマスタークラスを受講。リスト音楽院セミナーにてミクローシュ・ペレーニ氏のマスタークラスを受講。元東京クヮルテットの池田菊衛氏のマスタークラスをカルテットにて受講。これまでにチェロを羽川真介、山本祐ノ介、松波恵子の各氏に、室内楽を山口裕之、大野かおる、松波恵子の各氏に師事。現在、フリーのチェロ奏者としてソロ、アンサンブル、オーケストラなど幅広く活動中。洗足学園音楽大学演奏補助要員。