日時 |
2020年11月25日(水) ①9:30~10:15 ②10:35~11:20 |
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出演 |
弦楽四重奏[松原勝也/保手浜朋子(ヴァイオリン) 重松 彩乃(ヴィオラ) 広瀬直人(チェロ)] |
概要 |
実施会場:京橋築地小学校音楽室 対象者:小学4年生2クラス 人数:44名 助成等:文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会 |
【プログラム】
♪ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第7番 へ長調 Op.59-1「ラズモフスキー第1番」より
第1楽章 アレグロ
第4楽章 テーマ・ルッス:アレグロ
【レポート】
●:演奏者の働きかけ
◎:インターン 三好萌子 観察レポートより
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●拍手の中、演奏者たちが登場し、ベートーヴェン作曲、弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」より第1楽章の冒頭部分を演奏。
◎子どもたちは真剣なまなざしで4人が演奏している様子に見入っていました。登場後すぐ、説明や挨拶なしにいきなり演奏が始まったため、子どもたちは演奏に引き付けられたように思いました。
●先ほど演奏した中から、2パートずつ演奏する箇所を取り出して聴いてもらった後に、それぞれの楽器を紹介。そして、もう一度先ほど演奏した2パートだけの箇所を演奏していくと、その続きには4つのパートが重なり合って出てきます。
◎それぞれの楽器の名称や特徴の違いの説明を受けたうえで演奏をもう一度聴くことで、同じ弦楽器でも役割が違うことを感じられたのではないかと思います。初めに演奏したのと同じ箇所を再現したため、楽器の知識が入ることで1回目とは違う聴き方をすることができたのではないでしょうか。
●次に、チェロ、ヴィオラ、第1、第2ヴァイオリン、それぞれの楽器が、単独だとどんな音がするか、短いメロディーを用いて紹介。
そして、今、ばらばらに演奏したメロディーを 4 人で一斉に弾いたら、どんな風に聴こえるかな・・・?
◎同じ箇所を演奏しているのも関わらず、4人で重ねた時は上下の音の幅の広がりが全く違っており、一人ずつ演奏している時とは全く違う音楽に聴こえました。一人ずつ演奏した後に合奏したことから、より合わせた時の良さが伝わったと思いました。また、松原さんが「合唱も同じようにたくさんのパートが合わさっている」というの話を例に出してくださったことで、子どもたちが「ソロではなく合わせることの良さ」を自分の身近な経験からも理解できたのではないでしょうか。
●今度は、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンと、順番に音を重ねていったら、どんな風に聴こえるかな・・・?
◎低音のチェロから始まり順に上から音を重ねていくのを聴いた子どもたちからは、「お~」という声があがりました。自分自身は、伴奏の下3パートは厳かで神聖な雰囲気だったのが、1st第1ヴァイオリンのメロディーが入ることで華やかになったように感じました。徐々に音が増え、音域が広がっていったことから、音の厚みを子どもたちが感じたのではないかと思います。
●同じ第1楽章の音楽で、今度はまた新しい体験をしてもらいます。
気になった楽器、弾いてみたいと思った楽器を一つだけ選んでもらって、その楽器になったつもりや、演奏しているつもりになって聴いてみてもらいます。
◎自分の好きな楽器を選びその楽器になりきって聴くことで、演奏者、鑑賞者の壁を越えて一緒に音楽を作っている気持ちになることができました。ヴィオラ、チェロが子どもたちに人気があったのが意外に感じました。4人で合わせた演奏を鑑賞者として客観的に聴くのではなく、あえて一つの楽器に注目することで、音楽の作り手としての自分が具体的に想像しやすかったのではないでしょうか。
●また同じ演奏箇所を、今度は目をつむって聴いてみたら、どんな風に感じるでしょうか?さっきとはまた違って聴こえてくるかな?
◎目をつぶって聴いた際、「音が響いて聴こえた」「音と自分との距離を感じた」といった声が子どもたちからありました。視覚情報がなくなり音だけに集中したことで、より音そのものを感じる事が出来たためではないでしょうか。
●今まで一部分を取り出して聴いてもらっていた第1楽章を、最後まで通して聴いてもらいました。
楽器になりきってみたり、音が重なった響きを楽しんだり、目をつむって聴いてみたり、子どもたちの好きな聴き方で聴いてもらいます。
◎一曲通しで演奏を聴いている時は、ずっと同じ楽器に集中している子や、いろんな楽器に視線を向けている子、演奏者を見ずに音だけを聴いている子がいました。通しで聴く前に様々な音楽の楽しみ方を演奏家から提示されたことで、子どもたちは自分の好きな聴き方で音楽を感じ取っていたように思います。
●次に、明るく快活なメロディが駆け巡る、第4楽章の冒頭部分を演奏。今度の曲は、自分が「旅」に出ている想像をしながら、音楽を聴いてもらいます。
◎どんな旅をしながら音楽を聴いていたか尋ねられると、子どもたちは様々な想像をそれぞれ自由に頭の中で繰り広げていました。「野原で家族とピクニックをしていた」と嬉しそうに語る子や、中には「りんごを食べたらすっぱかった」と味覚で感じ取ってくれた子もいました。それぞれが自分の物語を、目を輝かせながら話していました。演奏を聴く前に、「雨が降っている」「晴れている」「道に石が落ちている」など、様々な具体例を提示されたことで、子どもたちも自由に想像することができたのではないでしょうか。
●また「旅」の続きを想像しながら、音楽を聴いてもらっていましたが、途中で音楽が止まりました。行き止まりに来てしまったようです。この先にも道があるのはわかるのだけれど、どうやったら向こうまで行けるのか?どんな道が間にあったら?何が起こったら?行き止まりを突破できると思う?
子どもたちから出たアイデアを元に、アドリブ演奏で音楽の道を作って、行き止まりを突破してみます。
◎旅の続きで行き止まりにぶつかってしまった場面では、今まであまり興味を示さなかった子どもたちも「どういうこと?」と一生懸命に食いついていました。また、演奏者のアドリブ作曲には笑い声があがり、演奏者、鑑賞者の壁を越えてみんなで音楽を楽しんでいました。音楽室中が温かい空気に包まれたような気がしました。「行き止まり」という具体的なストーリー展開を示してあげることで、子どもたちは想像しやすかったのではないかと思いました。また、アドリブ作曲でも特に反応が良かったのは、「落ちる」という解決策に対して、音も流れるように下降するものだったので、音と想像上の情景がリンクするようなアドリブが良かったのではないかと思いました。
●最後に、この曲を作ったベートーヴェン本人が考えた方法で、行き止まりを突破して、旅を続けます。
もう一度、それぞれの「旅」の続きを想像しながら、最後まで演奏を聴いてもらいました。
◎みんなで意見を交わしながら盛り上がった後に聴いたベートーヴェンのオリジナルは、何度もいろんな方法で行き止まりを突破した後に開けた道であったため、明るく前向きな気持ちになれました。ただ演奏を聴くのと、みんなで自由に想像して、ストーリーを語り合った後に演奏を聴くのとでは、曲のイメージが変わるのだと感じました。子どもたちにも、様々な音楽の聴き方、楽しみ方があるということが伝わったのではないでしょうか。
◎コロナウイルスの影響で人との交わりが少なくなっている今だからこそ、音楽を通して意見を交わしたり、心を通わせ合ったりすることができるということを改めて感じさせられたように思います。今回が初めてのアウトリーチ参加であるため、コロナ以前との比較はできませんが、自分が想像していたよりも子どもたちは積極的に自分の考えを述べたり、自分の好きなやり方で音楽を楽しんだりしていて、非常に良い時間であったと感じています。
(インターン 三好萌子 観察レポートより)
東京藝術大学在学中に安宅賞受賞。ティボール・ヴァルガ国際コンクール、クライスラー国際コンクール等で上位入賞。第17回中島健蔵音楽賞、第55回文化庁芸術祭新人賞受賞。89~98年まで新日本フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターを務める。01年よりNPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール主催の若い演奏家のための弦楽セミナーをプロデュース。東京藝術大学音楽学部教授。 |
広島県出身。桐朋女子高等学校音楽科を経て桐朋学園大学音楽学部卒業。同大学研究科、桐朋オーケストラ・アカデミー修了。第22回日本クラシック音楽コンクール第5位。2018年、鳥取大学室内管弦楽団と共演。これまでにヴァイオリンを正守佳代子、田中晶子、豊田弓乃、久保良治、双紙正哉の各氏に、室内楽を岩崎洸、惠藤久美子、漆原啓子、白尾彰、田中雅弘の各氏に師事。 |
若いヴァイオリニストのためのルイ・シュポア国際音楽コンクール(ドイツ) ファイナリスト、現代曲特別賞受賞。横浜国際音楽コンクール第一位。平成30年度(公財)青山音楽財団奨学生。これまでにヴァイオリンを寺岡有希子、窪田茂夫、ヴァシリィ・メルニコフ、松原勝也各氏に、バロックヴァイオリンを戸田薫氏に師事。 東京藝大附属音楽高校卒業。リュブリャナ大学音楽アカデミー、東京藝術大学音楽学部にて学ぶ。 |
石川県金沢市出身。東京都立大学卒業。東京芸術大学別科チェロ専攻修了。これまでにチェロを北本秀樹、田中雅弘の各氏に室内楽を松原勝也、澤和樹、田中麗子、田中雅弘、北本秀樹の各氏に師事。第7回別府アルゲリッチ音楽祭に参加。第33、34、35回、霧島国際音楽祭マスタークラス修了。現在、ソロ、室内楽、オーケストラ等で活動の他、後進の指導にもあたる。ホームページ:https://naochan321.wixsite.com/mysite |