日時 |
2016年11月15日(火) 0~2歳児 10:00~10:15(15分間)/3歳児 10:40~11:00(20分間)/4,5歳児 11:15~11:45(30分間) |
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出演 |
Quartet MIYABI [前田奈緒/ 北見春菜(ヴァイオリン) 髙橋梓(ヴィオラ) 印田陽介(チェロ)] |
概要 |
実施会場:中央区立晴海こども園 ゆうぎ室 対象者:0~5歳児 人数:150名(0歳12名、1歳15名、2歳18名、3歳35名、4歳35名、5歳35名) 助成等:文化庁「平成28年度劇場・音楽堂等活性化事業」 |
園児達に身近な動物の鳴き声を通じて、一緒に歌い参加することによって弦楽四重奏の世界をわかり易く学び楽しく体験する、園児達に即して良くプログラミングされたアウトリーチコンサートです。
0歳から5歳まで約150名在園している晴海こども園で0~2歳の45名(15分間)、3歳の35名(20分間)、4~5歳の70名(30分間)を対象に行いました。
4~5歳対象のコンサートでは、6~7名保護者の方が同席見学されていました。始める前、園長先生から「今日は弓と弦での音楽を楽しみましょう」との挨拶がありましたが、昨年もアウトリーチで訪れていたことを覚えている園児も多くいました。
コンサート開始は印田さん(チェロ)だけが入場して舞台で弦をはじいて *開始曲 「きらきら星行進曲」* を演奏し始めて、暫くして前田さん(第1ヴァイオリン)と北見さん(第2ヴァイオリン)と髙橋さん(ヴィオラ)が園児達の後方から演奏しながら入場行進してきました。華やかな色彩のコンサート衣装が少し緊張気味の園児達の眼を引き、何が始まるのか興味津々で見て聴いていました。
続いて舞台前で各自持っている楽器の形状を比較しながら楽器名の紹介と自己紹介をしました。
多くの園児達がヴァイオリンとチェロを良く知っていて直ぐに名前を叫んでいました。
しかしながら、ヴィオラは演奏を聴く機会が少ないので、多くの園児達は名前が分からない中、1名の女子園児が言い当てました。昨年の7月の時には分からなかったので、素晴らしいことです。
先ずは弦をはじいての演奏と告げると、園児達から「弦をはじいて演奏ができるのかな?」「壊れてしまうよ」との疑問の声が出ていました。*二曲目は バルトーク:弦楽四重奏曲 第4番より第4楽章」* 弓を使わずそろって弦をはじく(ピチカート)奏法には、初めは園児達も驚きましたが、統一された音の演奏には興味を持って静かに一生懸命聴き、通常とは違う弦楽奏法の世界を体験しました。
次は園児達の身近にいる動物の鳴き声「牛(チェロ)、犬(ヴィオラ)、猫(ヴァイオリン)」をそれぞれの楽器の音色で聴かせ、園児達に当てさせる *「動物鳴き声クイズ」* でした。
緊張もほぐれて聴き耳を立てて聴いていた園児達は直ぐに牛(低音)と猫(高音)の鳴き声が分かりました。犬(中音)の鳴き声は少し時間がかかりましたが、最後には言い当てました。
これを受けて「猫の鳴き声が出てくる曲だけど、最後に違う動物の鳴き声が出て来るよ」と告げて、*三曲目 アンダーソン:「ワルツィング・キャット」*の演奏です。 園児達は可愛い猫の声が出て喜んで熱心に聴いていましたが、最後のヴィオラの犬の鳴き声が登場するとまねをしていました。そこで髙橋さんが最後に犬の鳴き声に驚いて猫が逃げた状況を教えると、園児達も曲想がわかったようでした。身近な動物の鳴き声を通して園児達は楽しく音色の違いがわかったと思います。
今度はみんなも参加しましょうと告げると、園児の中には「楽器持っていないから参加できないよ」と言っていました。でも、事前に調べておいた園児達が歌いたい曲の *四曲目 みんなで歌いましょうの「手のひらを太陽に」* を全員で起立して楽器がなくても初めて弦楽四重奏と一緒に元気一杯2番まで歌いました。途中から手のひらを前に掲げて歌う何名かの園児がいて、ただ座って演奏を聴くのではなく、弦楽器と一緒に歌って園児達は参加することでコンサートへの一体感を実感してその表情から本当に楽しそうでした。
さらに、髙橋さんから皆さんへの贈り物の演奏ですと告げて、事前に先生方へ尋ねておいた園児達に聴かせたい曲の中から、髙橋さんによって素晴らしく編曲された *五曲目 秋メドレー(小さい秋みつけた~夕焼け小焼け~赤とんぼ~紅葉~故郷~小さい秋みつけた~虫の声~村祭り)* の人の声に近い(と言われている)ヴィオラのとても心地の良い中低音で始まる唱歌の演奏です。季節にあった園児達にも親しみ易い唱歌メドレーの演奏ですので、赤とんぼ、紅葉、虫の声等は、園児達も座って先生ともに口ずさんだりして秋の名曲を楽しんでいました。季節香る良く知っている美しいメドレー曲の展開を静かに聴くことで弦楽四重奏をより身近に感じていました。
最後の締めくくりは印田さんよりいくつ蛙の鳴き声がわかるかなと告げて、*六曲目 ハイドン:弦楽四重奏曲「蛙」より第四楽章* の演奏をしました。
各弦楽器が奏でるカエルの鳴き声を通して美しい音色が融合されていく演奏を園児達も静かに集中して聴いていました。身近で本格的な弦楽四重奏の素晴らしい音色と響きの音楽世界を聴いて強いインパクトを園児達に与えたことは集中して聴いている姿でよくわかりました。
アンコール曲は全員起立して、普段はピアノ伴奏で歌っている、 *園歌* を弦楽四重奏の伴奏で3番まで歌いました。園歌の歌詞に出てくるので、何名かの園児は手を繋いで振って歌っていましたし、また途中から前田さんが一歩前出て前列の園児に近づき腰を屈め、園児達の目の近くで演奏を見せることもあって、皆が生き生きと教室に響き渡る歌声でアウトリーチコンサートを締めくくりました。
終演後、出演者たちが退場する時、出口に数十名の園児達が笑顔で元気に駆け寄り出演者にハイタッチし見送っていました。この光景は園児達がこのコンサートを充分に楽しんだことを表していて本当に良かったです。
出演者退出後、先生は園児達にコンサートの感想を聞いてみていました。
「どの色の衣装が良かった?」(⇒青、赤とそれぞれの自分の好みの色を言っていました。)
「なにか聴きたいことがあった?」(⇒園児の中から「どうして小さい楽器は高い音が出て大きい楽器が低い音なのですか?」という質問が出ていました。)
「どの楽器を今後やりたい?」という質問に対しては、ヴァイオリンとチェロは多数の園児が手をあげましたが、ヴィオラの楽器を言い当てた園児を含む3名がヴィオラに手を挙げていました。今回のコンサートを受けて、園児達の弦楽器への関心と興味が高くなったのがわかりました。
我々が譜面台を片付けていたら、女子園児2名が「これは何ですか?」と尋ねてきたり、演奏中ほとんど関心や参加しなかった男子園児1名が片づけを手伝ってくれたり、演奏以外にも大人と違い意外なところに感心があることを知りました。
最後に、前出の園児の「なぜ小さい楽器は高い音なのに大きい楽器は低い音なの?」との素朴な質問は、別室で園長先生と出演者とのお話しの中でも話題になりました。
これに対し我々大人は直ぐに構造上から説明しよう考えて応えようとしますが、髙橋さんが身体の大きさ比較の比喩で「みんなの声は高いけれど、体の大きいお父さんは低い声が出るよね」と答えてあげたらと言われました。我々はなるほどと園児達に即した素晴らしい対応と感心しました。
今年7月にもクァルテット雅が出演した日本橋幼稚園では紙芝居を通して弦楽四重奏を紹介しましたが、今回は動物の鳴き声を通して楽しく弦楽四重奏の世界を知っていく方法で紹介しました。クァルテット雅は園児達に即したプログラミングを考え実践しています。
今回のアウトリーチでも3曲目以降6曲目までは「起承転結」(私はそう思いました)のプログラムで園児達に弦楽四重奏を通じてより音楽を楽しみ、わかり易く、飽きさせず、興味を引く形で伝える工夫をしているのが良く分かりました。
次回はどのような「起承転結」の工夫されたプログラムで園児達にアプローチするのか大いに期待をしています。
(サポーター柴﨑 康久)