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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

アウトリーチ
室内楽アウトリーチセミナー
室内楽アウトリーチセミナー

4年生はじめてのクラシック(全3回)
江東区立有明小学校

基本情報

日時 2013年12月12日(木)(1回目)
2014年1月28日(火)(2回目)
出演 ミュージック フレンド カルテット
[中村ゆか里/原実和子(ヴァイオリン) 柳瀬省太(ヴィオラ) 山澤慧(チェロ)]
概要 実施会場:江東区立有明小学校
対象者: 4年生2クラス
人数:  49名
助成等: 平成25年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

出演者プロフィールは こちら

レポート

■1回目レポート■

 室内楽アウトリーチセミナーの実践として小学4年生を対象に3回行うアウトリーチのために、セミナーの受講生たちは事前に学校を訪れ、4年生の担任教諭と打ち合わせをし、子どもたちの様子や普段の学習の内容をリサーチしました。
今回は、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番を用いて子どもたちに音楽は様々な感じ方、聴き方をすることができるということを知ってもらい、みんな一緒ではなく自分なりの聴く力を養うことを目的としました。

まず第1回目は、「各弦楽器の特徴を知ってもらう」「弦楽四重奏について理解を深める」「弦楽器で演奏される音楽に興味をもってもらう」の3つのポイントを目的にプログラムを組み立てました。
始めにショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番より第1楽章を聴いてもらい、その後、自己紹介とそれぞれのソロ演奏を交えながら各楽器の紹介をしました。

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次に、弦楽器のいろいろな奏法を知ってもらうために「有明小学校校歌」を4種類の違う奏法で演奏し、どんな風に演奏していたか子どもたちに当ててもらいました。子どもたちからは次々に手が挙がり、よ~く見て聴いている様子が窺えました。
さらに、弦楽四重奏の歴史の中での遷り変りがわかるように曲想の違う3曲を取り上げました。1曲目のハイドン作曲、弦楽四重奏曲第67番「ひばり」では、第1ヴァイオリンがメロディを担当し、他は伴奏的な役割をすることを説明し演奏。2曲目のチャイコフスキー作曲、弦楽四重奏曲第1番より「アンダンテ・カンタービレ」では、作曲家の気持ちや感情を音楽で表現するようになったことを説明し演奏。3曲目のショスタコーヴィチ作曲、弦楽四重奏曲第3番より第3楽章では、戦争の時代などもありより激しい音を出すようになってきたことを説明し演奏。子どもたちは音楽には様々な曲があるということを理解している様子でした。
最後に、次回までにこのクァルテットの名前を考えてくださいとお願いして1回目のアウトリーチは終わりました。

TANスタッフ

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■2回目レポート■

【レポート1】
開校3年目という新しい校舎の広々としたランチルームで、室内楽アウトリーチセミナー受講生によるアウトリーチが行われました。今回は3回連続シリーズの2回目で、「想像力を働かせながら聴く」ということがテーマとなっていました。
 前半はまず題名付きの曲を、曲名を言わずに演奏し、どんなイメージを持ったかを児童から発表してもらいました。1曲目の「愛のよろこび」(クライスラー)では、「楽しい感じ」、2曲目の「愛の悲しみ」(同)では「悲しい感じ」という意見がそれぞれ出ました。3曲目は、「四季より“冬”」(ヴィヴァルディ)の一部を演奏して、どの季節だと思ったか、どうしてそう思ったのか、を発表してもらいました。「最初の静かなところが冬って感じ」と言う意見や、「秋って感じ。最初が悲しい感じ」などの意見が出ました。続いて演奏した部分では、「雪が降っている感じ」とか、「暖炉の前にいる感じ」などの具体的な場面を想像している児童もいました。

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 次に、クラシックには題名が付いていない曲がほとんどで、色々な聴き方、感じ方があることを話した上で、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番(一部分)を演奏しました。児童からは「怖い感じ」「悪い人から逃げる」などの意見が出ました。演奏者の一人は、「性格の悪いピエロがいたずらをしている場面を想像しながら演奏しています。」と伝えました。 
それから児童に紙を配り、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番の中の4つの場面ごとに児童に書く時間を与えて、それぞれ意見を発表してもらいました。児童からは、「真夜中に森にお化け」「受験で受かった喜び」「誰もいない所でひそひそ」など、様々な意見が出て、想像力を働かせて聴いている様子がうかがえました。中には絵を書いている児童もいました。

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45分間の授業で、想像力や思考力を働かせながら曲を聴取し続けることは、児童にとっては忍耐も必要で、退屈に感じることもあるかと思いますが、題名付きの曲から入ったことで、後半は難解とも言えるショスタコーヴィチにも抵抗なく聴く耳を維持できたのではないかと思います。目の前で楽器から、そして演奏者の身体から溢れ出てくる音楽を聴きながら、児童はたくさんの事を感じ取っていたようです。
今回は感じ取った思いを発表したり書いたりすることで、言語化する活動に結びつけており、これは、学習指導要領にも求められている「楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったことを言葉で表すなどして,楽曲の特徴や演奏のよさを理解すること。」という内容に即した活動と言えると思います。ただ、発表することが恥ずかしくて手が上がらない児童にも、発言を促せるような場面があると良いと思いました。
前回のアウトリーチの時に児童たちと約束したカルテットの名前決めは、「ミュージックフレンド・カルテット」と決まり、児童たちはこの日の演奏を心待ちにしている様子でした。演奏者と児童たちとの心のつながりを感じさせてくれた楽しいアウトリーチでした。 

TANサポーター 鈴木香代子


【レポート2】
ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲第3番に焦点を当てたアウトリーチの第2回目。この日は、カルテットの名前を命名してもらう記念すべき日でもありました。
最初に子どもたちから名前の発表があり、“ミュージック フレンド カルテット”という新しい名前とともにこのアウトリーチは始まりました。
まずは表題音楽を使って、子どもたちに音楽を聴きながら自分なりの感じ方・イメージを考えてもらいました。このとき、クライスラーの「愛のよろこび」、「愛のかなしみ」、ヴィヴァルディの『四季』より「冬」第1楽章を演奏しました。
次にはいよいよ、ショスタコーヴィッチ弦楽四重奏曲第3番より第5楽章を演奏。5楽章を4つに分けて演奏し、子どもたちはそれらに対するイメージや物語を自由に考えて、ワークシートに記入していきます。子どもたちはそれぞれ全く違ったことを表現していて、発想の豊かさに驚き、感動しました。
表題音楽から想像への入り口をつくり、メインのショスタコーヴィッチでじっくり子どもたちに耳を傾けてもらうためのきれいな流れができていたように見えました。次回のアウトリーチではまたどのような形でこの曲へアプローチしていくのか、今からとても楽しみです。


インターン 西村聡美