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オペラ講座~『蝶々夫人』をもっと楽しむ
講座レポート3

2021年3月4日

第一生命ホールで3月20日に行う「室内楽ホールdeオペラ~佐藤美枝子のオペラ『蝶々夫人』」の関連企画として、2月13日に実施した「オペラ講座~『蝶々夫人』をもっと楽しむ」から、レポート第3弾をお届けします。

<講師>3月の公演の演出を担当する中村敬一さん、音楽監督・ピアノの服部容子さん、蝶々夫人を歌うソプラノ佐藤美枝子さん

これまでのオペラ講座レポート その1  その2

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6.ピッチーナのバタフライこそプッチーニが望んだ理想 ― 7.室内楽ホールdeオペラ~佐藤美枝子「蝶々夫人」の見どころ

ここで中村さんから佐藤美枝子さん、服部容子さんにインタビュー。

中村「美枝子さんも最初はコロラトゥーラ(注:技巧的な華やかに装飾された)作品が多かったですよね。それがレパートリーを広げる中で、蝶々夫人にたどり着いたということですね。」

佐藤「『蝶々夫人』を歌うには、私には中間音の厚みが足りないと思っていたのですが、一昨年『夕鶴』を歌った時に、舞台上で声を模索しながら歌っていったわけですが、そろそろ良い年齢にさしかかってきて、声の状態も、こういうものを少しずつ歌わせていただけるところに入ってきたと確信ができたので、挑戦できるのではないかと思いました」

中村さん「ちょうどキャリアを積み重ねて、そういう時期に差し掛かっているのですね。楽しみです。

プッチーニのオーケストラは少なくとも80人くらい。鳴らせる音量も大きいし、幾重にも音があるなかで、声を届かせなければいけません。でも、美枝子さんもそうですが、先輩方も大きな声でなく、クオリティの高い声でオーケストラの上を飛んでくるような表現をしている。しかもピッチーナという、かわいらしい小娘のような表現をオーケストラの上に結実させている。それが、今回の一番の楽しみだろうと思います。ヨーロッパに行けばオーケストラに負けないような迫力ある大きな声で歌う蝶々夫人もいます。でもプッチーニが望んだのは、そうではなく、ピッチーナ。美枝子さんは、歌い手として、ちょうど熟して、階段を上って、いいところに来ていますね。

そして今回は、音楽監督としてサポートする立場で服部さんが入っています。本来オーケストラが80人で演奏するものをピアノひとりで弾くのは大変なのでは?」

服部容子さん「ピアノ・リダクション(オーケストラをピアノで弾けるように編曲してある楽譜、ヴォーカルスコア)の楽譜どおりに弾くと少し音が薄いので、私なりに音を組み合わせて足して、オーケストラに近い雰囲気を楽しんでいただこうと思います。ピアノという減衰楽器の特性を活かして、皆さまを支えるべく努力していきます。

プッチーニは、劇場を知り尽くした男で、必要以上に歌を消すことはないんですね。歌と一緒のラインを弾いている楽器があるのですが、とても効果的ですごいなと思います」

中村「プッチーニは当時上演されている色々なオペラを、自分の作品も含めて、時代錯誤と酷評しているんです。プッチーニがやりたかったことは当時実現していなかったのかもしれませんね」

服部「当時は、プッチーニの音楽は、今で言う『現代音楽』という言葉に近かったかもしれません」

中村「20世紀初頭なので、まだ舞台をリアルに見せる技術がなかった時代です。当時は体格がとても良い歌手が大声を張り上げて歌い、それをお客さんは声で聴いていた。今はオペラは、だからと言って映画のように見せるものではなく声を楽しんでいただく芸術ですが、見た目にも納得する作品が求められると言えるかもしれません」

服部「ドニゼッティ、ヴェルディは、歌舞伎が五七五七七で台詞を言うように、韻を踏んで歌詞が書かれていますので、技巧に寄っていて、それはそれですばらしく私も大好きですが、そのあと写実的なヴェリズモ・オペラの時代が来ます。プッチーニは、五七五七七も残りつつ、リアルさも混ざってきた、ちょうどおいしい時代。それを美枝子さんのようにベルカントの技術を大成している方が歌うということで、贅沢な時間が過ごせるのではないかと思います」

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締めくくりはやはり歌でということで、プッチーニのピッチーナの歌を聞いていただこうと、佐藤美枝子さんの歌う「ジャンニ・スキッキ」からラウレッタのアリア「私のお父さん」を最後に聞いていただきました。

プッチーニが理想とした小柄でつつましやかな女性ピッチーナの性格を持つ蝶々夫人を、佐藤美枝子さんが舞台でどのように表現するのか、そして中村さんに振られるとパッとその場で暗譜でプッチーニからウェルディまで暗譜で弾いてくださる服部容子さんが、どのように芸術監督として音楽を構成し、80人のオーケストラをピアノ1台で奏でるのか、室内楽ホールという制約がある中での中村敬一さんの演出はどのようなものになるのか、3月の公演がますます楽しみになる講座でした。

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佐藤美枝子のオペラ「蝶々夫人」

■日時:2021年3月20日(土) 14:00開演
■会場:第一生命ホール
■出演
 佐藤美枝子(蝶々夫人)
 井ノ上了吏(ピンカートン)
 与田朝子(スズキ)
 久保田真澄(シャープレス)
 服部容子(音楽監督・ピアノ)
 中村敬一(演出)
 山本郁子(語り)
■曲目
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より(字幕付き)

詳細は こちら

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