クァルテット・エクセルシオ(以下エクQ)とクァルテット奥志賀が共演する公演について、インタビューをご紹介しています。今回が最終回となります。
今回は、クァルテット奥志賀のみなさんに、それぞれどんなメンバーなのか他己紹介して頂きました。
――お客さまの中には奥志賀Qを聴くのは初めてという方もいらっしゃるでしょうから、お互いにそれぞれのメンバーの紹介をしていただけますか。ヴァイオリンのファーストとセカンドは、いつも会田さんと小川さんで仲良く決めるのですか。
会田:そんなことはない、って小川さんの顔に書いてありますね。
石田:曲によって変えていると思います。ベートーヴェンやモーツァルトといった古典は、小川さんがファーストを担当していることが多いよね。
黒川:ふたりのキャラクターが全然違うので、曲も全然違う感じになります。奥志賀のアカデミーでは、楽章ごとにファーストとセカンドを換えるのが決まりなので、同じ作曲家でも変わったりして。
会田:楽章で交代するから、レパートリーは増えないんですよね。(苦笑)
黒川:この楽章はこちらがファーストがいいと決めて演奏するのですが、それぞれの歌いまわしとか歌心の違いが出るので、私も弾いていていつも楽しいし、おもしろいなと思います。ふたりとも、お互いの違いが分かっているからこそ、それぞれがパートを換えた時に、弾き方が変わっているんだなと思います。
石田:器用じゃないとできないよね。
――お二人は自分たちのキャラクターの違いは意識しているんですか?
会田:いやもう本当に、小川さんはヴァイオリニストとして素晴らしくて。情熱があって。
小川:私は、会田さんはずっと前から尊敬している存在なので、自分がファーストを弾くときは、申し訳ない気持ちがあるくらい。大学も、会田さんは桐朋、私は芸大で、先生も違うので、アプローチのしかたが少しずつ違って、そこがまたいいところ。そういう部分で補強しあえる関係でありたいなと思っています。
会田:こんなに違うタイプなのによくクァルテットを組んでいるね、と言われるんですよ。悪い意味ではなくて。本当は、似たタイプで組んでいたら、楽は楽だと思います。だから、今、小川さんが言った通り、全く違うものを持っているからこそ、もちろん難しいこともあると思いますが、それによってお互いが刺激をしあって良くなっていく。私にとっては、この4年間くらい良い勉強になっています。先生から教わるのではなく、こうして同世代で弾きながら学んでいく、この経験は良かったと思います。みんな海外に行ったりと忙しくなるけど、奥志賀Qはおもしろいし、続けていきたい。みんなに置いていかれないように、がんばりたいと思います。
吉田:素晴らしいですね。
――ヴァイオリンを紹介していただいたところで、次は、チェロの黒川さんについてはいかがですか。
小川:大きく分けて素晴らしい面を2つお持ちだと思います。まずメロディを歌うのが本当に素晴らしい、そして、女性なのに、太くていい音で、音楽を運んでいってくれる。そういったところがすごく好きです。
黒川:照れる(笑)。
会田:黒川さんは、このクァルテット随一のヴィジュアル系で。お客様を集める時、実咲さんが出るならと来てくださる方も(笑)。ヴィジュアル系というと誤解がありそうですが、実力もある。だから奥志賀Qには、色々な個性があるねと言われます。黒川さんの音に慣れてしまうと、他の方と組むと、「あれ? チェロが聴こえない」ということがあります。自分の歌を持っていて、低音から発せられる歌にとても安心感があって、いいなと思います。
石田:見た目は女性的で柔らかい印象ですけど、とても太くてたくましい音がする印象があります。すごく男らしい時がある。
全員:あるあるある。
会田:でも、ちゃんと色気も持っているから(笑)。
――では最後に、最近ヴィオラとして奥志賀Qに入られた石田さんについて。彼女にお願いしようと思った決め手は?
小川:石田さんは私の大学の先輩なのですが、学内で選抜された生徒だけが出演する室内楽演奏会に毎年出ていらして、本当に尊敬して背中を追いかけている存在だったんです。その演奏会に、ある年、ヴァイオリンとしてもヴィオラとしても出ていらして、それを聴いて、本当にすごいなと思って。ファースト・ヴァイオリンを演奏されていた時代に、すでにヴィオラでも、やりたいと思うことを全てやっていらしたのです。室内楽ではこういうヴィオラを弾いて欲しい、というような演奏をされていて。私は、ヴァイオリンどうしで一緒に弾いたことがありますが、石田さんのヴィオラとも共演したいですと言った記憶があります。
黒川:「クァルテット奥志賀」という名前なので、同世代で奥志賀のアカデミーを経験している方がいいなとも思いました。ちょうど、石田さんがヴィオラで留学するという時期で、石田さんのヴィオラはすごく良いと色んな人からも聞いていたし、私たちのことをよく分かっているから、絶対大丈夫だなというのがありました。それこそ、クァルテットでずっとヴァイオリンを弾いていたから、こういう風に弾いてほしいということを、すごくよく理解してくれているのです。
石田:アカデミーの時からずっと見ているクァルテットで、尊敬していたので、そこに入るというのは畏れ多いという気持ちはありました。音楽創りへのこだわりが強いイメージのあるクァルテットなので、もちろん私が入ることでぶつかることもあるかも知れませんが、そのこだわりの音の重なり合いに加われることがすごく嬉しい。楽しみだなと思って「お願いします!」と言いました(笑)。
――エクQのみなさまから奥志賀Qへ、エールなどはありますでしょうか。
西野:今、お話を伺っていると、ポジティブな面しかないですよね。メンバー交代がありましたが、石田さんが入って新鮮な気持ちで前を見ていることが素晴らしい。
――エネルギーが伝わってきましたよね。
奥志賀:エネルギーだけはある。会田:音も大きいと思う。モーツァルトでも。
石田:同世代の友人から、「このメンバー、アツい...(笑)」っていわれます。
会田:みんな、言われる、言われるっていうけど、私は言われないから、私のせい?
石田:いや、揃っちゃったって感じかな。会田さんとは同じ学年なのですが、私たちは、わりとキャラクターが似ているんですよ。
会田:本当に石田さんが来てくれてよかった。この女性4人になっての本番はまだなのですが、どういう感じになるのか、というところですね。一応、4人で写真を撮る時に、服だけはかわいくしておきました。(一同爆笑)
第1部は、元気いっぱいの奥志賀Qと、ベテランのエクQ、それぞれの味わいを弦楽四重奏曲で聴き比べ。第2部は2つの団体ががっぷり4つに組んだエネスコの弦楽八重奏曲が今から楽しみです。
クァルテット・エクセルシオ×クァルテット奥志賀
■日時:2019年3月9日(土) 14:00開演
■会場:第一生命ホール
■出演
クァルテット・エクセルシオ[西野ゆか/双紙正哉(ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 大友肇(チェロ)]
*第2ヴァイオリンの山田百子が健康上の理由により出演できなくなりました。 代わって双紙正哉が出演いたします。
クァルテット奥志賀[会田莉凡/小川響子(ヴァイオリン) 石田紗樹(ヴィオラ) 黒川実咲(チェロ)]
■曲目
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K428 (クァルテット奥志賀)
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」(クァルテット・エクセルシオ)
エネスコ:弦楽八重奏曲 ハ長調 Op.7
公演詳細は こちら