今や日本を代表するクァルテット・エクセルシオ(以下エクQ)が、次世代の若いクァルテットと共演する企画が今年からスタート。
第1回は「クァルテット奥志賀(以下奥志賀Q)」との共演です。
エクQ3人と奥志賀Q4人にお集まりいただき、伺ったお話を、何回かに分けておおくりしています。
前回のブログでは、エクQが奥志賀Qを選んだ理由や、奥志賀Qの結成についてをご紹介しました。 前回のブログは、こちら
共演するエネスコの弦楽八重奏曲について
会田:大友先生から小川さんのところに、「パート分け決めました、これで」って、いきなり降ってきた。どれを弾くのか知りたくて小川さんから聞いてもらったのですが、予想に反したパートで。
――まず、2つのクァルテットが共演する曲を、エネスコの八重奏曲にしようと思ったのは、エクさんのアイディアですよね?
大友:そうそう。彼女たちと共演するんだったら、エネスコにしようと僕が言い出したかな。
黒川:八重奏って聞いていたので、メンデルスゾーンだなと思っていました。そしたら、「エネスコやるんだ?」って。
大友:メンデルスゾーンを演奏してしまったら、後がないじゃないですか。それと、エネスコも良い曲で、ずっとやりたいと思っていた曲だから。
――演奏したことは?
大友:やったことはないんです。
西野:エクではないです。
吉田:聴いたことしかないです。
――エクQとしても奥志賀Qとしても初めてなのですね。
奥志賀:めったにやらない曲ですからね。
大友:それを、できる人たちだと思って。
――パート決めはどのように?
西野:ヴァイオリンの4つのパートは、このクァルテットが1、2番で、このクァルテットが3、4番というのが、一番ノーマルなのですが、ミックスして演奏するのがおもしろいかなと思いました。ファースト・ヴァイオリンは奥志賀と決まっていたので。
――決まっていたのですか?!
(全員爆笑)
会田:もちろん、相談はないですよ(笑)。ファースト・ヴァイオリンは、ものすごく難しいです。これくらい高い音なのか、と思って見たら、上に点々(......)があり、さらにオクターヴ上?!って。今まで出会った中で一番難しい曲かもしれない。
西野:ぶっちゃけ、別格でファースト(1番)が大変。4番も要になるところがあるので、結構目立ちます。それで会田さんが1番、小川さんが4番と。
――ヴィオラとチェロのパートは?
吉田・大友:1番が奥志賀、2番がエクです。
石田:ヴィオラも、「なんで?」って感じなんですけど...。
会田:く、苦情??(爆笑)
吉田:だいたい八重奏曲をやる時は、下のパートをエクがやって、上のパートを他のみなさんにという形にしています。
石田:エネスコは、ヴィオラ1番が結構おいしいというか。
吉田:期待しています。
石田:最初、私が1番と聞いたとき、もうびっくりでした。音源を聴いてみて、え、これって1番ヴィオラ?と。この音が2番であることを願う、と思ったのですが(笑)。スコアの段を数えて、「あー5段目!!」って。いえ、楽しみなんですけど。先生たちの支えのもと弾けるのは。
会田:やはり下のパートが、しっかりしていないとダメなので、エクの皆さんに支えていただいて演奏できるのはうれしいです。いや、エクが2団体いれば良かったんですけど。
大友:チェロも、やはりどちらかというと1番がメロディーライン、2番は下でボンボンやっている感じだったと思います。最初から、結構音が分厚いですけどね。
一同:うんうん。分厚い。
石田:大友先生の音の運びが、好きです。
会田:すごいんですよ、本当にもう。
奥志賀(口々に):もう大好き! その上に乗って弾くのが楽しみです!
大友:2月に北杜市(八ヶ岳)で、エクと奥志賀で合宿をすることになっていますので、そこでエネスコも演奏してみるのが楽しみですね。
会田:エネスコの実演を聴いたことがないのですが、皆さんはありますか。
大友:サントリーホール室内楽アカデミーで取り上げられたことがありますね。竹澤恭子さんがファースト・ヴァイオリンを弾いていたことが強烈な印象で...。......そういえば、チェロはマリオ・ブルネロでしたね。
――ブルネロほどのチェリストの演奏が、一瞬、記憶から飛ぶほど、ファースト・ヴァイオリンの印象が強いんですか。
西野:はいっ!!
吉田:本当に、コンチェルト並みの演奏で。
会田:どのコンチェルトよりも難しいかも。
石田:コンチェルトは自分が弾けばいいけど、八重奏だと室内楽なので、やることも多いしね。
会田:今までの中で一番難しいかもしれません。実は、ルーマニア国際音楽コンクールで優勝したご褒美で、ルーマニアに行ったことがあるのです。博物館になっているエネスコの家にも行きました。エネスコの誰も弾かないようなソナタを弾いたこともあるので、エネスコ自体は結構身近ではあります。ただ、今回は、音数が身近じゃなかった......。
大友:ブカレストに、エネスコ音楽院があるよね。
西野:エクQとして現代音楽祭に参加しました。
吉田:4、5年前ですね。
会田:私が行ったのは、2011年です。エネスコに親近感をもてるのは、そのくらいかな。
石田:でもそれは大きいよね。
一同:(口々に)それは大きい。
会田:本当にがんばりますとしか言えません。今は。
エク:それは、こちらもです。
それぞれの団体が演奏する弦楽四重奏曲について
――第1部はそれぞれの団体による弦楽四重奏曲ですが、奥志賀Qが弾くモーツァルトのヴァイオリンパートは、エネスコが決まった後に、ファースト、セカンドを決めたのですか?
小川:会田さんにファーストを、と言ったんですけど、お願いだから、と言われて......。
会田:エネスコのファーストは、数えるほどしか休みがないんだもん。
石田:体力を残しておきたいよね。
――プログラムは、まず共演するエネスコが決まってから、それぞれの曲を考えたわけですね。奥志賀として、モーツァルトK428にした理由は何でしょう。
会田:最初は、これまでに演奏したことあるモーツァルトの曲を出したのですが、このシリーズですでに他のクァルテットが弾く予定になっていて。
小川:「ハイドンセット」の中で考えようと思い、それで、これが良い曲なんじゃないかと。
石田:私は大学時代、自主的に組んだメンバーで最初に勉強したクァルテットの曲で思い出深いです。ヴァイオリンでしたが。温かみがあってすごく好きです。
田中:他のみなさんは、それぞれ弾いたことがあるのですか?
奥志賀3名:ないです。
黒川:「不協和音」はすでに演奏したことがあったので、初めての曲に挑戦しようとなりました。
――奥志賀Qとして、守りには入らないということですね。
会田:守れよって!!(一同爆笑)
――今は、海外にいるメンバーもいる中、なかなか合わせをする時間が取れないのではないかと思いますが、この仲の良さ、信頼感の強さから、攻めていってもいいものができるのではないかと感じますね。エクQの弦楽四重奏曲は、ヤナーチェク「クロイツェル・ソナタ」ですね。
大友:後半のエネスコに行くのに、(ヨーロッパの)東の方にだんだん行こうって感じだったんじゃないかな。
吉田:ここ数年、第一生命ホールではモーツァルト中心だったので、違った雰囲気の曲を楽しんでいただけると思います。
クァルテット・エクセルシオ×クァルテット奥志賀
■日時:2019年3月9日(土) 14:00開演
■会場:第一生命ホール
■出演
クァルテット・エクセルシオ[西野ゆか/双紙正哉(ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 大友肇(チェロ)]
*第2ヴァイオリンの山田百子が健康上の理由により出演できなくなりました。 代わって双紙正哉が出演いたします。
クァルテット奥志賀[会田莉凡/小川響子(ヴァイオリン) 石田紗樹(ヴィオラ) 黒川実咲(チェロ)]
■曲目
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K428 (クァルテット奥志賀)
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」(クァルテット・エクセルシオ)
エネスコ:弦楽八重奏曲 ハ長調 Op.7
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